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白樺派ゆかりの我孫子を歩く

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千葉県北西部、茨城県との県境に位置する我孫子市。南に手賀沼を望む市内中心部は、かつて白樺派の文人らが集った別荘地でもあります。



今も一部に名残をとどめています。先日、柏の摘水軒を見て来た際、少し散歩してきました。


「我孫子市白樺文学館」

まず目指したのは白樺文学館。文字通り白樺派の文人たちの活動を顕彰する施設です。我孫子駅の南口からやや東向きに手賀沼側へ歩いて15分。住宅地の中に3階建ての白い建物が見えてきました。

入館料は300円。かなり小さなスペースです。はじめの展示室には柳宗悦の妻、兼子が日本民藝館より持ち込んだというグランドピアノが置かれています。兼子はアルトの声楽家。我孫子でも夫を支援すべく音楽活動を続けたそうです。地下には音楽室もありました。そこではCDで兼子の独唱を聞くことも出来ます。朗々たる歌声。しばし耳を傾けました。

文学館自体は元々、個人の運営だったそうです。平成21年度より市に管理が委託。白樺派作家の原稿、書簡のほか、民藝活動に携わった人々の作品資料が展示されています。

ちょうど「民藝運動と我孫子」というテーマ展が行われていました。展示室は小さな部屋が2つ。リーチのエッチングや陶芸に芹沢の型染、ほか棟方志功による色紙などが目に付きます。点数自体は僅かです。とはいえ、全体が何となしに響き合って見えるのは、所縁の我孫子という土地のなすゆえなのでしょうか。

図書室が一番充実していました。白樺派と民藝運動に関する書籍が所狭しと並んでいます。さらに雑誌「白樺」の復刻版や、柳宗悦、志賀直哉、武者小路実篤の全集も揃っています。自由に閲覧が可能です。ゆっくり資料に目を通すのも良いかもしれません。


「志賀直哉書斎」(我孫子市指定文化財)

一通り文学館を見終えて外に出ると、ほぼ目の前に志賀直哉邸跡がありました。鬱蒼とした森の下に木造の小屋が建っています。書斎の復元です。ここで志賀は暗夜行路などを書きました。彼は柳のすすめで我孫子に移住した人物の一人。大正4年から12年の約9年間ほど住んでいたそうです。


「三樹荘跡」(柳宗悦居宅跡)

その柳宗悦の邸宅跡こと三樹荘跡も文学館の近くです。現在は個人のお宅のため非公開。市教育委員会による案内板のみがあります。建物はもちろん当時のものではありません。しかしながら名前の由来となった椎の大木は残っています。


「天神坂」(三樹荘下)

ちなみに柳が我孫子に来たのは大正3年。妻の兼子との新婚生活を送ります。かのリーチも三樹荘内に窯を築くなど、民藝運動の一つの拠点と化していました。


「嘉納治五郎別荘跡」(天神山緑地)

講道館柔道の創設者である嘉納治五郎も我孫子に別荘を構えた人物です。そもそも柳宗悦は嘉納の甥。我孫子に柳夫妻を呼んだのも嘉納です。彼が我孫子にいなければ、柳は我孫子に来なかったかもしれません。その意味では民藝や白樺のネットワークの礎を築いたとも言えます。現在は何も残っていませんが、緑地として整備されていました。


「杉村楚人冠句碑」

記者で随筆家の杉村楚人冠も我孫子に住んでいました。住居跡には句碑も建っています。また句碑の近くには杉村楚人冠の記念館もあります。当時の母屋がそのまま残されているそうですが、既に閉館時間が過ぎていたために観覧はかないませんでした。


「手賀沼一帯」

最後は手賀沼まで降りてみました。湖畔一体は手賀沼公園。生涯学習センターなども位置しています。


「バーナード・リーチの碑」

近くでリーチの碑も見つけました。我孫子はとても静かな街です。約1時間半前後の散策となりましたが、しばし楽しめました。

「常設テーマ 民藝運動と我孫子」 我孫子市白樺文学館
会期:2月24日(水)~10月30日(日)
休館:月曜日。但し月曜日が休日の場合は直後の平日。年末年始(12月29日~1月3日)。
時間:9:30~16:30
料金:一般300(240)円、高校・大学生200(160)円。
 *( )内は20人以上の団体料金。
住所:千葉県我孫子市緑2-11-8
交通:JR線我孫子駅南口より徒歩15分。

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