東京藝術大学大学美術館
「驚きの明治工藝」
9/7~10/30
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東京藝術大学大学美術館で開催中の「驚きの明治工藝」の特別内覧会に参加してきました。
江戸後期から明治にかけての日本の工芸品に魅せられた一人の人物が台湾にいました。名は宋培安。本業は漢方の薬剤師です。宋は約3000点もの工芸品を収集。台湾における最も大規模なコレクションを有するに至りました。
その工芸品が里帰りしてきました。総数は約130点。漆工、金工、陶磁、七宝、染織のほか、自在置物など、幅広いジャンルの作品を網羅しています。
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宗義「自在龍」 明治〜昭和時代
それこそ驚くべき工芸品が冒頭から目に飛び込んできました。「自在龍」です。長さは何と3メートル。宙に浮いています。口を開いては手を広げ、さも勇ましい姿です。長い角も生やしています。素材は鉄です。自在とあるだけに、間接の部分を動かすことが出来るのでしょう。ちなみに浮いているのは、宋の自宅のリビングでも実際に吊るしているからだそうです。さぞかし壮観な光景となるに違いありません。
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宗義「自在蛇」 明治〜昭和時代
ちなみに自在置物の数はおおよそ20点。鷹に蛇、鯉や海老に蟹から、蜉蝣や蜘蛛までと多様です。いずれも精巧に作られた作品ばかりでした。
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「自在蛇」映像
うち一点、「自在蛇」に関しては、実際に動かす様子を捉えた映像もあります。トグロを巻いた蛇が長く伸びてはうねる姿はまるで生きているかのようです。うろこも大変に細かい。いかんせん動かせる作品だけに、手に触れたくなってしまいますが、ここは映像が参考になりました。
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自在置物の各パーツ
置物のパーツが展示されているのも面白いところです。龍の頭、鯉の胴体、鳥の脛の部分が出ています。蛇や龍などは鱗を刻んだ円筒を作り、大きさを変えては連結。鋲留めして完成させるそうです。自在置物は明治時代、主に輸出を目的として作られたため、国内にはまとまって残っていません。私自身、今回ほどのスケールで自在置物を見たのも初めてでした。
さてタイトルの「驚き」。その対象を挙げるとすれば、一に超絶技巧、二に高い写実性にあるのではないでしょうか。
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涛川惣助「月に梅図盆」 明治時代
技巧、例えば七宝です。七宝とは「金属の素地にガラス質の釉薬をかけ、高温の熱で焼き付ける装飾技法」(キャプションより)を意味しますが、その技術は明治に入り進化。新たな釉薬の発明もあったようです。より緻密な表現を伴う作品が次々と生み出されます。
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「月下港辺図壁掛」 明治時代
天鵞絨友禅も同様です。遠目ではほぼタブローにしか見えませんが、名が示すように素材は友禅。つまり染め物です。パイルの部分を切り残しては立体感を追求し、絵画性を高めていきます。近づいて見ても図像はぼやけません。まるで写真を見るかのようでした。
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宮本理三郎「柄杓蛙」 昭和時代
一方での写実性はどうでしょうか。宮本理三郎の「柄杓蛙」です。一つの木製の柄杓、よく見ると一匹の蛙がのっています。これを木工で表現しているから凄まじい。本物と見間違えてしまいます。
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竹江「蝉」 明治時代
一匹の蝉にも目が留まりました。やはり精巧。これぞ写実の極致と言わんばかりの作品ですが、キャプションを見てさらに驚きました。何と体は木の彩色、脚は銀、羽は水牛の角を使用しているのです。何故にこれほど様々な素材を用いて作ったのでしょうか。
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橋本市蔵の「竹塗煙管筒」 江戸〜明治時代
素材といえば橋本市蔵の「竹塗煙管筒」にも注目です。何気ない煙管。節の存在しかり、竹で出来ているようにしか見えませんが、これもまた意外な素材で作られています。ここはあえて伏せます。会場で是非確かめて見てください。
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山田宗美「兎」 明治時代
山田宗美は鉄を打ち出しては動物を象っています。何でも山田は造形のために準備を惜しまず、動物園に通っては観察したり、自邸の庭で様々な動物を飼っていたそうです。兎やライオンはむしろ可愛らしい。写実は幾分控え目でもあります。
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虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」 明治時代
ほか蒔絵にも華麗な作品が少なくありません。一人のコレクターの審美眼を通して辿る明治工藝の数々。驚きはもちろん、技法にも発見の多い展覧会でした。
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「驚きの明治工藝」会場風景
場内はごく一部の作品を除き、撮影が可能です。(フラッシュ、三脚不可。)また通常、美術館内は携帯の電波が届きませんが、今回は特別にWi-Fi環境を整備。無料で接続することも出来ます。
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「驚きの明治工藝」会場風景
ハッシュタグは「#驚き明治」です。TwitterなどのSNSでシェアするのも楽しそうです。
10月30日まで開催されています。
「驚きの明治工藝」(@odorokimeiji) 東京藝術大学大学美術館
会期:9月7日(水)~10月30日(日)
休館:月曜日。但し7月18日は開館。7月19日は休館。
時間:10:00~17:00
*10月21日(金)、22日(土)は20時まで臨時夜間開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1100)円、高校・大学生800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
「驚きの明治工藝」
9/7~10/30

東京藝術大学大学美術館で開催中の「驚きの明治工藝」の特別内覧会に参加してきました。
江戸後期から明治にかけての日本の工芸品に魅せられた一人の人物が台湾にいました。名は宋培安。本業は漢方の薬剤師です。宋は約3000点もの工芸品を収集。台湾における最も大規模なコレクションを有するに至りました。
その工芸品が里帰りしてきました。総数は約130点。漆工、金工、陶磁、七宝、染織のほか、自在置物など、幅広いジャンルの作品を網羅しています。

宗義「自在龍」 明治〜昭和時代
それこそ驚くべき工芸品が冒頭から目に飛び込んできました。「自在龍」です。長さは何と3メートル。宙に浮いています。口を開いては手を広げ、さも勇ましい姿です。長い角も生やしています。素材は鉄です。自在とあるだけに、間接の部分を動かすことが出来るのでしょう。ちなみに浮いているのは、宋の自宅のリビングでも実際に吊るしているからだそうです。さぞかし壮観な光景となるに違いありません。

宗義「自在蛇」 明治〜昭和時代
ちなみに自在置物の数はおおよそ20点。鷹に蛇、鯉や海老に蟹から、蜉蝣や蜘蛛までと多様です。いずれも精巧に作られた作品ばかりでした。

「自在蛇」映像
うち一点、「自在蛇」に関しては、実際に動かす様子を捉えた映像もあります。トグロを巻いた蛇が長く伸びてはうねる姿はまるで生きているかのようです。うろこも大変に細かい。いかんせん動かせる作品だけに、手に触れたくなってしまいますが、ここは映像が参考になりました。

自在置物の各パーツ
置物のパーツが展示されているのも面白いところです。龍の頭、鯉の胴体、鳥の脛の部分が出ています。蛇や龍などは鱗を刻んだ円筒を作り、大きさを変えては連結。鋲留めして完成させるそうです。自在置物は明治時代、主に輸出を目的として作られたため、国内にはまとまって残っていません。私自身、今回ほどのスケールで自在置物を見たのも初めてでした。
さてタイトルの「驚き」。その対象を挙げるとすれば、一に超絶技巧、二に高い写実性にあるのではないでしょうか。

涛川惣助「月に梅図盆」 明治時代
技巧、例えば七宝です。七宝とは「金属の素地にガラス質の釉薬をかけ、高温の熱で焼き付ける装飾技法」(キャプションより)を意味しますが、その技術は明治に入り進化。新たな釉薬の発明もあったようです。より緻密な表現を伴う作品が次々と生み出されます。

「月下港辺図壁掛」 明治時代
天鵞絨友禅も同様です。遠目ではほぼタブローにしか見えませんが、名が示すように素材は友禅。つまり染め物です。パイルの部分を切り残しては立体感を追求し、絵画性を高めていきます。近づいて見ても図像はぼやけません。まるで写真を見るかのようでした。

宮本理三郎「柄杓蛙」 昭和時代
一方での写実性はどうでしょうか。宮本理三郎の「柄杓蛙」です。一つの木製の柄杓、よく見ると一匹の蛙がのっています。これを木工で表現しているから凄まじい。本物と見間違えてしまいます。

竹江「蝉」 明治時代
一匹の蝉にも目が留まりました。やはり精巧。これぞ写実の極致と言わんばかりの作品ですが、キャプションを見てさらに驚きました。何と体は木の彩色、脚は銀、羽は水牛の角を使用しているのです。何故にこれほど様々な素材を用いて作ったのでしょうか。

橋本市蔵の「竹塗煙管筒」 江戸〜明治時代
素材といえば橋本市蔵の「竹塗煙管筒」にも注目です。何気ない煙管。節の存在しかり、竹で出来ているようにしか見えませんが、これもまた意外な素材で作られています。ここはあえて伏せます。会場で是非確かめて見てください。

山田宗美「兎」 明治時代
山田宗美は鉄を打ち出しては動物を象っています。何でも山田は造形のために準備を惜しまず、動物園に通っては観察したり、自邸の庭で様々な動物を飼っていたそうです。兎やライオンはむしろ可愛らしい。写実は幾分控え目でもあります。

虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」 明治時代
ほか蒔絵にも華麗な作品が少なくありません。一人のコレクターの審美眼を通して辿る明治工藝の数々。驚きはもちろん、技法にも発見の多い展覧会でした。

「驚きの明治工藝」会場風景
場内はごく一部の作品を除き、撮影が可能です。(フラッシュ、三脚不可。)また通常、美術館内は携帯の電波が届きませんが、今回は特別にWi-Fi環境を整備。無料で接続することも出来ます。

「驚きの明治工藝」会場風景
ハッシュタグは「#驚き明治」です。TwitterなどのSNSでシェアするのも楽しそうです。
10月30日まで開催されています。
「驚きの明治工藝」(@odorokimeiji) 東京藝術大学大学美術館
会期:9月7日(水)~10月30日(日)
休館:月曜日。但し7月18日は開館。7月19日は休館。
時間:10:00~17:00
*10月21日(金)、22日(土)は20時まで臨時夜間開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1100)円、高校・大学生800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。