東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー「MOMAT コレクション」
「東山魁夷特集」
9/12~11/5
東京国立近代美術館のMOMATコレクションで開催中の「東山魁夷特集」を見てきました。
1969年、日本画家の東山魁夷は、手元の作品を、東京国立近代美術館にまとめて寄贈しました。この年に、美術館が京橋から竹橋へ移転し、梅原龍三郎などの画家からの寄贈品も加わったことから、コレクションがさらに充実しました。
その東山魁夷の絵画をまとめて公開しています。全部で17点です。会場は、館内のMOMATコレクションの一角、つまり常設展示室の8室と10室でした。
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東山魁夷「道」 1950年 東京国立近代美術館
まず目を引くのが「道」でした。青森県の牧場に取材した作品で、草地をただ奥へと進む一本の道のみを、どこか単純化した構図で描いています。よく見ると向こう側の方がやや高くなっていて、そこからさらに右手へ折れていることが分かりました。魁夷は本作において、「これから歩もうとする道」(解説より)を強調すべく、表したそうです。シンプルな構図や色彩感は、作品のイメージを際立たせていました。
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東山魁夷「秋翳」 1958年 東京国立近代美術館
その「単純な形の中に複雑なものを」(解説より)表そうとしたのが、「道」の約8年後に制作された「秋翳」でした。うっすらと桃色を帯びた空の下、紅葉に染まった山が描かれています。それ以外は一切なく、やはりシンプルです。ちょうど山が、画面の半分の地点にまで達しているからか、その三角形の形が、殊更に印象に残りました。
しかし複雑とは、何を意味するのでしょうか。答えは、山を覆う木々でした。ここに魁夷は、単に朱色ではなく、橙、紅、ピンクに色分け、多様に色づく紅葉を表現しました。また樹木の幹や枝も、細かに描きました。
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東山魁夷「冬華」 1964年 東京国立近代美術館
霧氷に覆われた、一本の大木がそびえ立つのが、「冬華」でした。寒々とした森林を背に、白く凍りついた木があり、頭上にはやや淡く光る天体が浮かんでいます。うす暗がりの光景のため、思わず月かと勘違いしてしまいましたが、実際は霧のために霞んでいる太陽でした。魁夷は、北欧への旅行の印象を基にして、「冬華」を制作したそうです。彼の地の冷気が伝わってくるような作品かもしれません。
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東山魁夷「残照」 1947年 東京国立近代美術館
俯瞰した構図で山々を表したのが「残照」です。どれほどの高さから眺めたのでしょうか。手前で茶色に染める山々は、彼方まで延々と連なり、奥では僅かにピンク色を帯びています。一部に煙がなびいているものの、山と空以外に何もありません。まさしく深遠で、思わず絵の前で深呼吸したくなるほどでした。
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東山魁夷「白夜光」 1965年 東京国立近代美術館
「白夜光」でも、同じように大地を遠くから見据えています。「冬華」と同様に、北欧旅行に取材した作品で、フィンランド中部のクオビオに広がるモミの平原を描きました。モミの森林の合間には水が流れ、空を反映したのか、銀色に輝いています。整然と奥へと並ぶモミの生み出す遠近感と、水平線による横への志向が同時に見られます。ひたすらに広い。平原は画面から拡張していくかのようでした。
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高山辰雄「穹」 1964年 東京国立近代美術館
さらに「雪降る」や「映象」などと充実しています。いずれも本画です。また、1964年の日展会場にて、魁夷の「冬華」と並んで話題となったという杉山寧、高山辰雄の「穹」も、あわせて展示されていました。見応えは十分でした。
音声ガイドに一工夫ありました。というのも、通常のガイドに加え、「残照」や「道」などの9点の作品に、魁夷本人の肉声解説が吹き込まれているからです。いずれも1968年、京橋時代の東京国立近代美術館の講堂で行われた美術講座、「私と風景画」の音源とのことでした。
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東山魁夷「雪降る」 1961年 東京国立近代美術館 ほか
魁夷は「人気作家」(解説より)だけに、他館への貸し出しが多く、まとめて展示する機会が決して多くないそうです。魁夷ファン注目の展示と言えるかもしれません。
常設展料金のみで観覧可能です。11月5日まで開催されています。
「東山魁夷特集」 東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー「MOMAT コレクション」(@MOMAT60th)
会期:9月12日(火)~11月5日(日)
休館:月曜日。
*但し9月18日、10月9日の月曜は開館。9月19日(火)、10月10日(火)は休館。
時間:10:00~17:00
*毎週金曜・土曜日は20時まで開館。
*企画展「日本の家」の会期中の金曜・土曜日は21時まで開館。
*入館は閉館30分前まで
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下、65歳以上無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*5時から割引:一般300円、大学生150円。
*無料観覧日:10月1日(日)、11月3日(金・祝)、11月5日(日)。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
「東山魁夷特集」
9/12~11/5
東京国立近代美術館のMOMATコレクションで開催中の「東山魁夷特集」を見てきました。
1969年、日本画家の東山魁夷は、手元の作品を、東京国立近代美術館にまとめて寄贈しました。この年に、美術館が京橋から竹橋へ移転し、梅原龍三郎などの画家からの寄贈品も加わったことから、コレクションがさらに充実しました。
その東山魁夷の絵画をまとめて公開しています。全部で17点です。会場は、館内のMOMATコレクションの一角、つまり常設展示室の8室と10室でした。

東山魁夷「道」 1950年 東京国立近代美術館
まず目を引くのが「道」でした。青森県の牧場に取材した作品で、草地をただ奥へと進む一本の道のみを、どこか単純化した構図で描いています。よく見ると向こう側の方がやや高くなっていて、そこからさらに右手へ折れていることが分かりました。魁夷は本作において、「これから歩もうとする道」(解説より)を強調すべく、表したそうです。シンプルな構図や色彩感は、作品のイメージを際立たせていました。

東山魁夷「秋翳」 1958年 東京国立近代美術館
その「単純な形の中に複雑なものを」(解説より)表そうとしたのが、「道」の約8年後に制作された「秋翳」でした。うっすらと桃色を帯びた空の下、紅葉に染まった山が描かれています。それ以外は一切なく、やはりシンプルです。ちょうど山が、画面の半分の地点にまで達しているからか、その三角形の形が、殊更に印象に残りました。
しかし複雑とは、何を意味するのでしょうか。答えは、山を覆う木々でした。ここに魁夷は、単に朱色ではなく、橙、紅、ピンクに色分け、多様に色づく紅葉を表現しました。また樹木の幹や枝も、細かに描きました。

東山魁夷「冬華」 1964年 東京国立近代美術館
霧氷に覆われた、一本の大木がそびえ立つのが、「冬華」でした。寒々とした森林を背に、白く凍りついた木があり、頭上にはやや淡く光る天体が浮かんでいます。うす暗がりの光景のため、思わず月かと勘違いしてしまいましたが、実際は霧のために霞んでいる太陽でした。魁夷は、北欧への旅行の印象を基にして、「冬華」を制作したそうです。彼の地の冷気が伝わってくるような作品かもしれません。

東山魁夷「残照」 1947年 東京国立近代美術館
俯瞰した構図で山々を表したのが「残照」です。どれほどの高さから眺めたのでしょうか。手前で茶色に染める山々は、彼方まで延々と連なり、奥では僅かにピンク色を帯びています。一部に煙がなびいているものの、山と空以外に何もありません。まさしく深遠で、思わず絵の前で深呼吸したくなるほどでした。

東山魁夷「白夜光」 1965年 東京国立近代美術館
「白夜光」でも、同じように大地を遠くから見据えています。「冬華」と同様に、北欧旅行に取材した作品で、フィンランド中部のクオビオに広がるモミの平原を描きました。モミの森林の合間には水が流れ、空を反映したのか、銀色に輝いています。整然と奥へと並ぶモミの生み出す遠近感と、水平線による横への志向が同時に見られます。ひたすらに広い。平原は画面から拡張していくかのようでした。

高山辰雄「穹」 1964年 東京国立近代美術館
さらに「雪降る」や「映象」などと充実しています。いずれも本画です。また、1964年の日展会場にて、魁夷の「冬華」と並んで話題となったという杉山寧、高山辰雄の「穹」も、あわせて展示されていました。見応えは十分でした。
音声ガイドに一工夫ありました。というのも、通常のガイドに加え、「残照」や「道」などの9点の作品に、魁夷本人の肉声解説が吹き込まれているからです。いずれも1968年、京橋時代の東京国立近代美術館の講堂で行われた美術講座、「私と風景画」の音源とのことでした。

東山魁夷「雪降る」 1961年 東京国立近代美術館 ほか
魁夷は「人気作家」(解説より)だけに、他館への貸し出しが多く、まとめて展示する機会が決して多くないそうです。魁夷ファン注目の展示と言えるかもしれません。
【美術館】MOMATコレクション展:東山特集。なんといっても最大のサービスは、混雑の少ないコレクション展会場で、代表作の数々をゆっくりとご覧いただけること。特集は現在開催中です。 pic.twitter.com/9duJ5eMK54
— 【公式】東京国立近代美術館 広報 (@MOMAT60th) 2017年10月1日常設展料金のみで観覧可能です。11月5日まで開催されています。
「東山魁夷特集」 東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー「MOMAT コレクション」(@MOMAT60th)
会期:9月12日(火)~11月5日(日)
休館:月曜日。
*但し9月18日、10月9日の月曜は開館。9月19日(火)、10月10日(火)は休館。
時間:10:00~17:00
*毎週金曜・土曜日は20時まで開館。
*企画展「日本の家」の会期中の金曜・土曜日は21時まで開館。
*入館は閉館30分前まで
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下、65歳以上無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*5時から割引:一般300円、大学生150円。
*無料観覧日:10月1日(日)、11月3日(金・祝)、11月5日(日)。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。