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「世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」 目黒区美術館

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目黒区美術館
「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」
2019/4/13~6/9



目黒区美術館で開催中の「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック」を見てきました。

2015年、アパレル会社の創業者である平明暘氏の寄贈により、京都国立近代美術館には、世紀末ウィーンのグラフィック作品が数多く収蔵されました。


ウィーン工房(編)/マティルデ・フレークル、マリア・リカルツ(画)ほか「ウィーン・ファッション 1914/15 1・4・5号」 1914/1915年

そのコレクションが目黒区美術館へとやって来ました。ウィーン分離派のクリムト、シーレ、ココシュカにはじまり、オットー・ヴァーグナー、ヨーゼフ・ホフマン、カール・モル等々、約300点もの作品が一堂に公開されていました。


「ヴェル・サクルム:オーストリア造形芸術家協会機関誌」 1898年〜1903(1904)年

冒頭がウィーン分離派で、機関誌「ヴェル・サクルム」や分離派展のカタログなどが並んでいました。またカール・モルの「ヴェル・サクレム」のためのオリジナル版画も魅力的で、コロマン・モーザー邸でもあった「ホーエ・ヴァルテの住宅」の素朴な質感にも目を引かれました。


「エゴン・シーレの素描」 1917年

「エゴン・シーレの素描」も目立っていたのではないでしょうか。ここでは細かに震えるような線を重ねて描いていて、どこか歪みを伴ったような独特の人物造形を見ることが出来ました。またクリムトの習作やココシュカのスケッチも、合わせて何点か出展されていました。


「世紀末ウィーンのグラフィック」会場風景

ウィーン世紀末は新しいデザインが花開いた時代でもありました。1903年には、ヨーゼフ・ホフマンとモーザーらにより、ウィーン工房が設立され、デザインの教育改革を推進していたウィーン工芸学校とともに、多様なデザインが生み出されました。


マルティン・ゲルラハ(編)/カール・オットー・チュシュカ、コロマン・モーザー、グスタフ・クリムトほか(画)「アレゴリー、新シリーズ、著名現代芸術家によるオリジナルデザイン」 1900年頃

ベルトルト・レフラーの「ディ・フレッヒェ(平面)」をはじめ、クリムトらの手がけた「アレゴリー、新シリーズ、著名現代芸術家によるオリジナルデザイン」などの幻想的なデザインは、いつの時代も全く古びることはありません。

ウィーン分離派の芸術家にとって重要だったのは、銅版よりも木版の表現でした。その1つの切っ掛けとなったのが、19世紀後半の日本の多色木版画のブームで、ウィーンでも分離派展などにおいて浮世絵が紹介されました。ただし彫りや摺りが分業されていた日本の木版と異なり、一人の芸術家が制作の全てを手がけていました。

そうした木版は、絵画と比べて安価であったことから、多くの人々に普及し、日々の生活に根ざしていきました。また新たなグラフィックは、何も美術雑誌だけでなく、ポスターやカレンダーなどの日常的な品や、書籍の装丁にも取り入れられました。まさにそれこそがタイトルにもあるように、デザインにおける「生活の刷新」だったのかもしれません。


エデッタ・モーザー「トランプカード」 1905年

ともかく右も左も心奪われるデザインばかりで、どれか一点をあげるのは困難でしたが、エデッタ・モーザーによる「トランプ・カード」や「カレンダー」などは、一目で頭に焼きつくような、ビジュアルとして強い作品と言えるかもしれません。


ベルトルト・レフラー(編)「ディ・フレッヒェ(平面)」 1910/1911年

現在、東京では東京都美術館の「クリムト展」、国立新美術館の「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展、そしてここ目黒区美術館での「世紀末ウィーンのグラフィック展」と、クリムトやウィーン世紀末に関する展覧会が立て続けに開かれています。


「世紀末ウィーンのグラフィック」会場風景

いずれも三者三様で切り口は異なりますが、これほど一連の作品をまとめて追える機会など滅多にありません。思わず手元に寄せて愛でたくなるようなデザインの数々に、強く引かれるものを感じました。


「世紀末ウィーンのグラフィック」会場入口

会期当初は、一部を除き、1階と2階の全ての展示室の撮影が可能でしたが、途中から「安全上の理由他」(美術館公式ツイッター)により、2階の撮影が出来なくなりました。(本エントリの写真は、全展示室撮影可の期間に撮影しました。)

【まもなく閉幕 6/9まで】現在開催中の展覧会「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新にむけて」は6/9(日)閉幕します。在庫僅少の展覧会グッズも一部ございますので、早めのご来場がおすすめです。https://t.co/j5us4tfor3 pic.twitter.com/Ldd3fqPyr4

— 目黒区美術館 (@mmatinside) 2019年6月1日
間もなく会期末です。6月9日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。

「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」 目黒区美術館@mmatinside
会期:2019年4月13日(土)~6月9日(日)
休館:月曜日。但し4月29日(月・祝)及び5月6日(月・休)は開館し、4月30日(火・休)及び5月7日(火)は休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は17時半まで。
料金:一般800(600)円、大高生・65歳以上600(500)円、小中生無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。

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