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「デザインの(居)場所」 東京国立近代美術館工芸館

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東京国立近代美術館工芸館
「所蔵作品展 デザインの(居)場所」
2019/5/21~6/30



東京国立近代美術館工芸館で開催中の「所蔵作品展 デザインの(居)場所」を見てきました。

1988年、クリストファー・ドレッサーやピエール・シャローの作品が収蔵されたことを契機に、東京国立近代美術館には数多くのデザインの作品がコレクションされてきました。現在は、工業デザイン192点、グラフィックデザイン776点を合わせ、計968点ものデザインの作品が収められているそうです。

そのデザインのコレクションのうち120点ほどが公開されました。また「デザインの居場所とは?」として、「国境」、「領域」、「時間」の3つの視点から作品を俯瞰しているのも特徴でした。


クリストファー・ドレッサー「ガーデン・チェア」 1867年 ほか

冒頭で目を引くのがクリストファー・ドレッサーで、「ガーデン・チェア」や「帽子掛け」などが展示されていました。ドレッサーは19世紀イギリスのデザイナーの1人で、産業革命後は機能性と完結性を兼ね備えたデザインを提案しました。両作品の模様には、ゴシックやバロックなどともに、当時のヴィクトリア朝の様式を見ることが出来ました。


右:ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルト「容器 キューブ」 1938年

バウハウスに関した家具や日用品にも目が留まりました。ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルトの「容器 キューブ」は、ガラスで出来た7つのユニットからなる蓋付きの容器で、重ねて保存できることから、収納場所を多くとらない利点を持ち得ていました。その実用性はタッパーウェアに近い面があるかもしれません。


イサム・ノグチ「あかり33S」 1952年

白く仄かな明かりが会場を満たしていました。それが和紙と竹を用いて作られたイサム・ノグチの「あかり」で、1953年に来日した際、岐阜で提灯制作の現場を見て感銘を受け、作品のデザインをしたとも言われています。


オットー・クンツリー「レンズ型のある構成(ブローチ)」 1994年 ほか

2015年に東京都庭園美術館で開催された回顧展の記憶も蘇るかもしれません。スイスのジュエリー作家、オットー・クンツリーは、円や四角などの幾何学的な形のブローチをデザインしました。一見、平面的に見えるかもしれませんが、筒状のものが突き出ていたり、穴が空いていて奥行きがあるのも魅力と言えるのかもしれません。


エンツォ・マーリ「SAMOSシリーズ 磁器のデザイン 21点」 1973年

展覧会のハイライトを飾るのが、エンツォ・マーリのデザインによる「SAMOS」シリーズで、全て手作業で作られた21種類の器が揃って展示されていました。


エンツォ・マーリ「SAMOSシリーズ 磁器のデザイン 21点」から 1973年

「ひも作り」とも呼ばれる、紐状の土を重ねて積み上げたボウルは、緩やかな曲線を描きながら、時に花を象るかのように広がっていました。また円盤を重ねた作品や、ガラスのデザインの作品もあり、エンツォ・マーリの魅力を十分に味わうことが出来ました。なお同シリーズが工芸館で一括して公開されたのは、実に約30年ぶりのことでもあります。


森正洋「平型めしわん」 1992年

森正洋の「平型めしわん」も面白いのではないでしょうか。通常の茶碗よりも浅く、口が広いのを特徴としていて、その分、内部の図柄がよく見えるようになっていました。森は当初、150種の茶碗を一挙に発表し、現在は販売されているものだけで、約200種類以上もあるそうです。色とりどりの器が並ぶ光景はどこか可愛らしくも映りました。


原弘「世界のポスター展」 1953年

小展示の「世界のポスター展」も見逃せません。これは1953年、当時、東京の京橋にあった国立近代美術館で開かれた展覧会を振り返るもので、当時出展された作品のうち5点のポスターと記録写真などが展示されていました。


左:北代省三「ギーゼキング演奏会」 1953年

なお同展は国立の美術館では初めてのポスター展であったことから関心が強く、15日間の会期のうちに1万8千人近くの観客を集めたそうです。


「所蔵作品展 デザインの(居)場所」会場風景

剣持勇などの椅子へ実際に腰掛けられるコーナーもありました。また一部を除き、撮影も可能です。


「所蔵作品展 デザインの(居)場所」会場風景

なお先にも触れた「国境」、「領域」、「時間」といった3つの視点のほかに、「デザインの規格化」、手と機械」、「工芸のデモクラシー」、「増え続けた結果…」など、19にも及ぶテーマも設定され、細かな解説(リーフレット)が付いていました。デザインと工芸の関係について考える1つの切っ掛けともなりそうです。

【工芸館】 #居場所展 本展は、エンツォ・マーリによるデザインの器を一堂に展示していることが見所の1つです。陶磁器のシリーズSAMOSとあわせて、ガラスでつくられた器も展示しています。構造が似ていても、素材が違うと印象が変わります。 #工芸館 pic.twitter.com/rbEihhVEc7

— 【公式】東京国立近代美術館 広報 (@MOMAT60th) 2019年6月4日
6月30日まで開催されています。

「所蔵作品展 デザインの(居)場所」 東京国立近代美術館工芸館(@MOMAT60th)
会期:2019年5月21日(火)~6月30日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~17:00 
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般250(200)円、大学生130(60)円、高校生以下、65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
場所:千代田区北の丸公園1-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩8分。東京メトロ半蔵門線・東西線・都営新宿線九段下駅2番出口より徒歩12分。

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