大田区立郷土博物館
「川瀬巴水 生誕130年記念 前期:大正期から関東大震災後の復興期までの作品」
10/27-12/1
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大田区立郷土博物館で開催中の「川瀬巴水 生誕130年記念」、前期展示「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」を見てきました。
本年、生誕130年を迎えた版画家、川瀬巴水。代表作「馬込の月」にも見られるように、巴水は一時期に馬込に居住。「昭和の広重」とも称され、日本各地の風景を精力的に描きました。
メモリアルイヤーでかつ所縁の地ならではの展覧会です。巴水版画500点を展観します。
さていささか手狭な大田区立郷土博物館。500点を一度に展示しているわけではありません。会期は前、中、後期の3期制。作品は全て入れ替わります。
前期:「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」 2013/10/27〜12/1
中期:「昭和初期から10年代の作品」 12/7〜2014/1/19
後期:「昭和20年代、及び晩年の作品」1/25〜3/2
現在は前期。展示は「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」です。大正8年から昭和5年頃までの作品が紹介されていました。
さて前期だけでも出品数は140点。個々の作品の感想をつらつら書いていくとキリがありません。よって今回は展示の要点や見どころなどを簡潔にあげていきます。まず興味深いのは良く知られた渡邊木版以外の作品もいくつか展示されていることです。
そのわけか見慣れないものもちらほら。例えば「演芸写真帖」。版権は大正通信社です。モチーフは市川松蔦に市川猿之助といった歌舞伎役者。つまり人物画です。それを巴水が描きました。
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川瀬巴水「雨の大宮」 昭和5(1930)年
また同じ作品ながらも異なる版が出ているのもポイント。「雨の大宮」では、酒井川口合版にカワグチ、そして中嶋尚美社の3点を展示。見比べられます。
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川瀬巴水「旅みやげ第三集 出雲松江」 大正14(1924)年
さて見比べるといえば今度は摺りの比較も重要です。旅みやげ第三集からは「出雲松江」。3枚出ていますが、それが曇り、おぼろ月、そして三日月の様子を表している。同じ風景とはいえ、当然ながら趣きは天気や時間で変化します。
そして旅みやげ第一集の「若さ 久出の濱」では木版の摺りの順序を追って公開。全34回の摺りのうち8回分の状況を見て取ることが出来ます。
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川瀬巴水「東京二十景 馬込の月」 昭和5(1930)年
また嬉しいのは木版にあわせて素描やスケッチも相当数出ていることです。先に触れた代表作「馬込の月」もスケッチの展示が。そして同じく有名な「明石町の雨後」。版画では手前の岸に子犬が一匹描かれていますが、スケッチには版画にはない和装の女性のシルエットが見える。原画にも同じく描かれているそうです。(*本作の原画展示はありません。)
また写生では「秋田土崎」も見どころ。版画と見間違うようなセピア色の夕景。見事な情景描写です。巴水の類い稀な表現力を伺うことが出来ます。
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川瀬巴水「東京二十景 明石町の雨後」 昭和3(1928)年
さらには若き巴水が友人たちに当てた絵葉書も展示。提灯画もあります。ともかく盛りだくさん。にも関わらず入場は無料です。また図録も刊行。2000円での販売です。ただ出品数が多いこともあるのでしょうか。全ての作品図版は掲載されていませんでした。
「Visions Of Japan: Kawase Hasui's Masterpieces/Hotei Pub」
それにしても巴水、むしろ国内よりも海外での評価が高いことで知られていますが、その一つの取っ掛かりとして「三菱深川別邸の図」、現在の清澄庭園を描いたシリーズにあったそうです。
ここで三菱はその縮小版を海外に展開。結果的に巴水の名が知られることになります。時代は大正。日本の美しき風景を当時の外国人はどう捉えたのか。巴水受容史の一端を見た気がしました。(余談ですが、本展出品リストには作品タイトルの英名も記されています。)
大田区立郷土博物館は西馬込駅の東口を出て徒歩7〜8分。一本道です。なだらかな昇り坂を進むと右手に見えてきます。
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周囲は馬込文士村とも名付けられ、大正から昭和期の様々な芸術家が移り住んだ地。散策コースもあります。のんびり散歩しながら出向いても良いのではないでしょうか。
前期展示「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」は12月1日までの開催です。(展覧会は2014年3月2日まで開催。)
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「川瀬巴水展ー郷愁の日本風景」@千葉市美術館(2013/11/26〜2014/1/19)
*千葉市美術館でも巴水展が始まりました。
「川瀬巴水 生誕130年記念」 大田区立郷土博物館
会期:2013年10月27日(日)〜2014年3月2日(日)*3会期制。展示替えあり。
休館:月曜日。祝日の場合は開館。及び年末年始(12/29〜1/3)。
時間:9:00〜17:00
料金:無料。
住所:大田区南馬込5-11-13
交通:都営浅草線西馬込駅東口より徒歩7分。
「川瀬巴水 生誕130年記念 前期:大正期から関東大震災後の復興期までの作品」
10/27-12/1

大田区立郷土博物館で開催中の「川瀬巴水 生誕130年記念」、前期展示「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」を見てきました。
本年、生誕130年を迎えた版画家、川瀬巴水。代表作「馬込の月」にも見られるように、巴水は一時期に馬込に居住。「昭和の広重」とも称され、日本各地の風景を精力的に描きました。
メモリアルイヤーでかつ所縁の地ならではの展覧会です。巴水版画500点を展観します。
さていささか手狭な大田区立郷土博物館。500点を一度に展示しているわけではありません。会期は前、中、後期の3期制。作品は全て入れ替わります。
前期:「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」 2013/10/27〜12/1
中期:「昭和初期から10年代の作品」 12/7〜2014/1/19
後期:「昭和20年代、及び晩年の作品」1/25〜3/2
現在は前期。展示は「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」です。大正8年から昭和5年頃までの作品が紹介されていました。
さて前期だけでも出品数は140点。個々の作品の感想をつらつら書いていくとキリがありません。よって今回は展示の要点や見どころなどを簡潔にあげていきます。まず興味深いのは良く知られた渡邊木版以外の作品もいくつか展示されていることです。
そのわけか見慣れないものもちらほら。例えば「演芸写真帖」。版権は大正通信社です。モチーフは市川松蔦に市川猿之助といった歌舞伎役者。つまり人物画です。それを巴水が描きました。

川瀬巴水「雨の大宮」 昭和5(1930)年
また同じ作品ながらも異なる版が出ているのもポイント。「雨の大宮」では、酒井川口合版にカワグチ、そして中嶋尚美社の3点を展示。見比べられます。

川瀬巴水「旅みやげ第三集 出雲松江」 大正14(1924)年
さて見比べるといえば今度は摺りの比較も重要です。旅みやげ第三集からは「出雲松江」。3枚出ていますが、それが曇り、おぼろ月、そして三日月の様子を表している。同じ風景とはいえ、当然ながら趣きは天気や時間で変化します。
そして旅みやげ第一集の「若さ 久出の濱」では木版の摺りの順序を追って公開。全34回の摺りのうち8回分の状況を見て取ることが出来ます。

川瀬巴水「東京二十景 馬込の月」 昭和5(1930)年
また嬉しいのは木版にあわせて素描やスケッチも相当数出ていることです。先に触れた代表作「馬込の月」もスケッチの展示が。そして同じく有名な「明石町の雨後」。版画では手前の岸に子犬が一匹描かれていますが、スケッチには版画にはない和装の女性のシルエットが見える。原画にも同じく描かれているそうです。(*本作の原画展示はありません。)
また写生では「秋田土崎」も見どころ。版画と見間違うようなセピア色の夕景。見事な情景描写です。巴水の類い稀な表現力を伺うことが出来ます。

川瀬巴水「東京二十景 明石町の雨後」 昭和3(1928)年
さらには若き巴水が友人たちに当てた絵葉書も展示。提灯画もあります。ともかく盛りだくさん。にも関わらず入場は無料です。また図録も刊行。2000円での販売です。ただ出品数が多いこともあるのでしょうか。全ての作品図版は掲載されていませんでした。

それにしても巴水、むしろ国内よりも海外での評価が高いことで知られていますが、その一つの取っ掛かりとして「三菱深川別邸の図」、現在の清澄庭園を描いたシリーズにあったそうです。
ここで三菱はその縮小版を海外に展開。結果的に巴水の名が知られることになります。時代は大正。日本の美しき風景を当時の外国人はどう捉えたのか。巴水受容史の一端を見た気がしました。(余談ですが、本展出品リストには作品タイトルの英名も記されています。)
大田区立郷土博物館は西馬込駅の東口を出て徒歩7〜8分。一本道です。なだらかな昇り坂を進むと右手に見えてきます。

周囲は馬込文士村とも名付けられ、大正から昭和期の様々な芸術家が移り住んだ地。散策コースもあります。のんびり散歩しながら出向いても良いのではないでしょうか。
前期展示「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」は12月1日までの開催です。(展覧会は2014年3月2日まで開催。)

「川瀬巴水展ー郷愁の日本風景」@千葉市美術館(2013/11/26〜2014/1/19)
*千葉市美術館でも巴水展が始まりました。
「川瀬巴水 生誕130年記念」 大田区立郷土博物館
会期:2013年10月27日(日)〜2014年3月2日(日)*3会期制。展示替えあり。
休館:月曜日。祝日の場合は開館。及び年末年始(12/29〜1/3)。
時間:9:00〜17:00
料金:無料。
住所:大田区南馬込5-11-13
交通:都営浅草線西馬込駅東口より徒歩7分。