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本日「日曜美術館」再放送は「福田平八郎」特集!

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山種美術館で開催中の「福田平八郎と日本画モダン」展。



平八郎作品における一定の様式を「日本画モダン」と位置づけ、その系譜を汲む日本画家たちを網羅した意欲的な展覧会です。

既に会期も半ばに差し掛かりましたが、それにあわせ、本日6月24日午後8時からのEテレ「日曜美術館」の本編にて特集が放送されます。

「モダンを極める 〜福田平八郎 新しい日本画への挑戦〜」@日曜美術館 再放送:6月24日午後8時〜

実は本放送を見逃してしまったのですが、聞くところによるとゲストに日本画家の中島千波さんを迎え、本編監修で山種美術館顧問の山下裕二先生が平八郎について話されるという内容だそうです。

「福田平八郎と日本画モダン」 山種美術館(プレビューの様子をまとめてあります。)

プレビューの記事にも書きましたが、そもそも若かりし山下先生が美術展の図録を初めて購入したというのが京近美の平八郎展(1975年)だとか。


プレス内覧時にスライド解説を行う山種美術館顧問の山下裕二先生

専門的な視点はもちろん、先生ならではの分かりやすく、また熱のこもったトークを伺うことが出来そうです。

それでは改めて展示の情報を整理しておきましょう。

まず展示替えです。それこそ今日までが前期です。明日、6月25日の休館日を挟み、一部作品が入れ替わります。

「福田平八郎と日本画モダン」展出品作品リスト(PDF)
 前期:5/26〜6/24 後期:6/26〜7/22 

後期にはチラシ表紙を飾る「雨」が満を持して登場します。トリミングの極致を極めた平八郎の最高傑作としても過言ではありません。注目が集まりそうです。


「福田平八郎と日本画モダン」展会場風景

続いて関連の企画です。誰でも参加可能な平八郎展のフォトコンテストが開催されています。

「福田平八郎と日本画モダン」展の関連企画 フォトコンテスト開催のお知らせ

既に応募専用フェイスブックページにも作品が続々集まっています。応募期限は会期末日の7月22日、賞品も多数です。関心のある方も多いのではないでしょうか。

また展覧会にあわせての特集ページが充実しています。

「福田平八郎と日本画モダン」特設対談ページ

山崎館長と山下先生、またフクヘンさんこと鈴木さんと山下先生の対談と盛りだくさんです。ちなみにフクヘンさんの対談では何とご自身の写真まで公開されています。プロの視点、大いに参考になりそうです。


「福田平八郎と日本画モダン」展会場風景

それでは繰り返しになりますが、日曜美術館の平八郎特集は本日20時スタート。私も視聴の上、また明日からの後期展示を見に行きたいと思います。

「福田平八郎と日本画モダン」 山種美術館@yamatanemuseum
会期:5月26日(土)〜7月22日(日)
休館:月曜日(但し7/16は開館、翌火曜日は休館。)
時間:10:00〜17:00(入館は16時半まで)
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

「紫舟+チームラボ」 ミヅマアートギャラリー

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ミヅマアートギャラリー
「紫舟+チームラボ:世界はこんなにもやさしく、うつくしい」 
6/5-6/30



ミヅマアートギャラリーで開催中の「紫舟+チームラボ:世界はこんなにもやさしく、うつくしい」へ行ってきました。

「ウルトラテクノロジスト集団」と名乗り、株式会社の形態でWEBプロデュースの他、メディアアートの分野でも意欲的な活動を展開しているチームラボ。一際異彩を放っていたアートフェア東京のブースをご記憶の方も多いかもしれません。

本展はそうしたチームラボ制作の映像に「書」が融合します。

書を担当したのは紫舟(ししゅう)。書はもとよりデザイナー活動の他、CMやテレビ番組などへの露出も少なくない新進気鋭の書家です。そちらで知っている方もおられるのではないでしょうか。

作品はインタラクティブです。大型二面スクリーン上に浮遊する書にタッチすると、スクリーンが反応し、美しくまたイマジネーションに富んだ映像が次々と展開されます。



大気に包まれ雨が降り、時に蝶から花、また鳥から木へと移りゆく姿はまさに自然そのものといえるのではないでしょうか。またどこか日本古来のやまと絵などの世界をも連想させます。そのイメージは実に典雅でした。

SISYU+teamLab "What a Loving, and Beautiful World" (beta版)


書の持つ情報、そして意味は、映像の力を借りることによって、より幻想的でかつ三次元的に広がっていました。

まさに百聞は一見にしかずです。書から広がる新しい景色、是非とも会場で試して下さい。

6月30日まで開催されています。

「紫舟+チームラボ:世界はこんなにもやさしく、うつくしい」 ミヅマアートギャラリー
会期:6月5日(木)〜6月30日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00〜19:00
住所:新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2階
交通:東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅出口5より徒歩5分。JR線飯田橋駅西口より徒歩8分。

「ベルリン国立美術館展」 国立西洋美術館

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国立西洋美術館
「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」
6/13-9/17



国立西洋美術館で開催中の「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」へ行って来ました。

ともかくチラシ表紙しかり、メインビジュアルの「真珠の首飾りの少女」が目立つベルリン美術館展。

もちろん日本初公開となったフェルメールの傑作が素晴らしいのは言うまでもありませんが、単にそれ一点豪華的な展覧会でないのが、今回の大きな魅力かもしれません。

まずは冒頭、意外なほどに充実しているのは、聖母子像をはじめとする15世紀のドイツやイタリアの彫像です。


ルーカ・デッラ・ロッビア「聖母子」1450年頃 ベルリン国立美術館彫刻コレクション

実はこの展覧会、絵画よりも彫刻の方が出品数が多いのも重要なポイントですが、とりわけ木彫に見逃せない優品が多くあります。

中でもまるで飛鳥仏の台座を思わせるかの如く彫りの深い着衣が面白い「聖母の誕生」(聖ヨアキムと聖アンナの彫刻家。1450年頃。)や、菩提樹を素材に極めて細やかな髪を示した「受胎告知」(ハンス・ヴィディツ。1510年頃。)などは、特に魅力的な作品と言えるのではないでしょうか。


ティルマン・リーメンシュナイダー「龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス」1490-95年頃 ベルリン国立美術館彫刻コレクション

北方の彫刻によるもはや過剰とまで言える陰影表現は実に個性的です。展覧会で彫刻というと脇役という感もしないではありませんが、今回はむしろ主役です。他にも剣を振り下ろすゲオルギルスを象った「龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス」(ティルマン・リーメンシュナイダー。1490年頃。)など、見どころは豊富でした。

一方、同時代の絵画では「洗礼者聖ヨハネ」(エルコレ・デ・ロベルティ。1490年頃。)が忘れられません。

真に迫る痩せ細ったヨハネ、その姿も痛々しいものですが、背景を見やると何やら象徴派を思わせる幻想的な景色が広がっています。 朝焼けとも月明かりとも見えるセピア色の風景、とても神秘的でした。


ルーカス・クラーナハ(父)の工房「マルティン・ルターの肖像」1533年頃 ベルリン国立絵画館

続いての肖像画のセクションではともかくデューラーとクラーナハが圧倒的です。

特に画家と同い年のモデルを描いたという「ヤーコプ・ムッフェルの肖像」(アルブレヒト・デューラー。1526年)の迫力は並大抵ではありません。

眉間による皺、眼球の周囲の筋肉の隆起はもとより、白髪が皮膚に絡みつく様子など、言わばその肉々しくも迫真的な表現はもはや神業ではないでしょうか。

また帽子の金のラインの点描表現も驚くほど細かく示されています。単眼鏡が必要なほどでした。

さて第三章「マニエリスムの身体」で再び彫刻を俯瞰した後は、お馴染みベラスケス、カラッチ、ロイスダールなどの揃う17世紀絵画へと到達します。

ここでは何と言ってもヤーコプ・ファン・ロイスダールの「滝」(1670-1680年頃)です。

やや逆光気味に後ろから光の当たる物質感のある雲、また左手の木立からぐるっと回って前へと落ちる水の力強い流れ、そして白い飛沫、さらには丸太を跨ぐ水の透明感など、どこか普遍的ともいえるロイスダールならでの自然が広がっていました。

なお絵画のセクションはもちろん、先に触れた彫刻しかり、当然ながら国や地域で大きく表現が異なっています。

サブタイトルは「学べるヨーロッパ美術」です。西美ニュースにも記載されていましたが、例えば優美なイタリアと迫真の北方の絵画や彫刻の比較、またマニエリスムの展開などを意識すると、より深い見方が出来るのかもしれません。

さていよいよ本丸、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」(1662-1665年頃)です。

他の展示室とは異なる特別室風のスペース中央に掲げられているので、思わず吸い寄せられてしまいますが、その右手前、レンブラントの「ミネルヴァ」(1631年頃)も見逃すことは出来ません。

深い闇に浮かび上がるミネルヴァ、特に顔の表現は神々しいほどの美しさに満ち溢れています。

メデューサの頭部を描いたという盾など、背景に関してはやや強めの照明にもよるのか、うまく見えませんでしたが、髪にかかる月桂樹の冠などの繊細な描写は絶品です。ずばり展覧会中で最もこの感動したのはこの一点でした。

さて「真珠の首飾りの少女」です。


ヨハネス・フェルメール「真珠の首飾りの少女」1662-65年 ベルリン国立絵画館

今更私が語るまでもない名品ですが、まず感心したのは画家の得意とする光の表現、特に壁における光の移ろいです。

窓から差し込む光、上部がやや陰っていますが、その影がうっすらと少女の方へ延びることで、一見なんら変哲のない壁こそが光を最も表していることがよく分かります。

また右手前の椅子もポイントです。ハイライトとして描かれる光の粒は窓から入ってきた光を確実に受けている上、手前に椅子が置かれたことで、空間へ奥行きが与えられました。

それによってフェルメールに特有の鑑賞者が画中の日常を覗き込むかのような構図が完成するわけです。

また黄色の衣服、いわゆるモフモフして見える毛皮の部分、どれほど目を凝らしても特に細かな線が入っているようには見えません。

毛羽立って描かれていないのにも関わらず、そう見えてしまう部分、これもフェルメールの高い画力の成せる業なのかと感心しました。

ちなみにこの一角にある唯一の木彫、イグナーツ・エルハーフェンの2点の作品、「イノシシ狩り」と「シカ狩り」も異様な迫力です。お見逃しないようご注意下さい。

通常企画展ではハイライトとして使われる機会の多い地下の展示室は全て素描です。そしてこれがまた充実していて一点も見て飛ばすことが出来ません。

中でも対照的な二点、ボッティチェリとミケランジェロは強い印象を与えます。


ミケランジェロ・ブオナローティ「聖家族のための習作」(1503-1504年頃) ベルリン国立素描版画館

自身の姿を聖ヨセフに投影したとも言われるミケランジェロの「聖家族のための習作」(1503-1504年頃)はともかく密な線、そしてそれが生み出す面としての迫力、強いては人物の立体感へと繋がる様子が見事だといえるのではないでしょうか。


サンドロ・ボッティチェッリ「ダンテ『神曲』写本より『煉獄篇第31歌』」1480-95年頃 ベルリン国立素描版画館

一方でのボッティチェリの2点、ダンテの神曲をモチーフとした素描はともかく細やかで滑らかな線に見惚れます。

まるで水に流れるかのような線の動きを見ていると、不思議にも今、東京国立近代美術館で回顧展が行われている吉川霊華の日本画の線を思い出してなりませんでした。

それにしても素描は如何せん近くに寄らないと楽しめません。どうしても多少の列が出来るかとは思いますが、ここは並んでもじっくり見たいところでした。

ラストは18世紀絵画です。これまでの流れからするとやや弱いかもしれませんが、ティエポロの「聖ロクス」(1730-1735年頃)の他、今秋に三菱一号館で回顧展が予定されているシャルダン(展覧会WEBサイト)などは見応えもありました。

なお最後の展示室にあるロールカーテンをくぐるとすぐさまフェルメールのスペースへ戻れます。係りの方にお声がけすれば大丈夫なようなので、見納めということで、再度フェルメールにレンブラントを楽しんでも良いかもしれません。


ベルナルディーノ・ピントゥリッキオ「聖母子と聖ヒエロニムス」1490年頃 ベルリン国立絵画館

西美の大型展、しかも日本初公開のフェルメールとくれば混まないはずもありません。

私は既に会期第一週と二週目の日曜、それぞれ午後3時過ぎから二度ほど鑑賞しましたが、その時の印象では16時半を過ぎるとかなり人が引けてくるような気がしました。

ただ懸念はもう一つの真珠、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を擁するマウリッツハイス展が今週末より都美館で始まることです。

上野でのフェルメール祭りということで、今後より一層混雑してくること間違いありません。

9月17日までの開催です。なお東京展終了後は九州国立博物館(10/9〜12/2)へと巡回します。

「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」 国立西洋美術館
会期:6月13日(水)〜9月17日(月祝)
休館:月曜日。但し7月16日、8月13日、9月17日は開館、7月17日は休館。
時間:9:30〜17:30 *毎週金曜日は20時まで開館。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。

美術館『くじ』アプリ「CountArt」がスタート!

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Tokyo Art Beatミュージアムカフェの他、根津美術館e国宝など、スマホの普及にあわせて充実してきたアート関連のアプリ。



特にiPhoneユーザーにとっては欠かせない日常的なアイテムになっているかもしれません。

そこへ今回、森美術館より、これまでにはない形でのアプリ、「CountArt」が配信されました。

「CountArt」
もっと多くの方に、気軽に美術に親しんでいただきたいという思いから生まれたCountArtは、首都圏17の美術館で、チケットやカタログがあたる「くじ」アプリです。
参加施設でアプリを起動しCheckInすると、来館者としてカウントされると同時にスピードくじの自動抽選が行われ、当選者には展覧会チケットやカタログが後日郵送でプレゼントされます。



繰り返しになりますが、要するに美術館のくじアプリです。使い方は簡単。ダウンロードしたアプリを森美術館の他、下記の17の美術館にて起動すると「Check In」機能が働き、その場で自動抽選、展覧会チケットなどが当たります。その場で当選が分かるというのも面白いところかもしれません。

参加施設

神奈川県立近代美術館 鎌倉
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
神奈川県立近代美術館 葉山
国立新美術館
国立西洋美術館
東京オペラシティアートギャラリー
東京都現代美術館
東京都写真美術館
日本科学未来館
原美術館
ハラ ミュージアム アーク
ポーラ美術館
三菱一号館美術館
森美術館
横浜美術館
ワタリウム美術館
展覧会のチケットやカタログの発送は森美術館が行うとのことで、賞品は同館のものに限定されるのかもしれませんが、ともかくはシンプルでお手軽。詳細な賞品や当選確率など、気にならない点もないわけではありませんが、とりあえずダウンロードしても損はしないのではないでしょうか。また提供が森美術館というのもどことなく安心感があります。



また私の思い過ごしかもしれませんが、これほどの広域に参加施設を集めての本アプリ、このプレゼント機能だけで終わらないような気がしてなりません。既に森美術館では公式アプリのMAMもありますが、同館の仕掛けるアプリ戦略、今後の展開にも注目したいところです。



森美術館からの「CountArt」アプリはiPhone、iPad限定です。appleの「App Store」から無料で配信されています。

「マウリッツハイス美術館展」、 いよいよ6/30に開幕!

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昨冬、記者発表会に参加して以来、「世界一有名な少女」との対面を心待ちにしていた展覧会。



もちろんその少女こそフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に他なりませんが、この傑作を筆頭に、マウリッツハイス美術館の誇るオランダ・フランドル絵画を俯瞰する展覧会が、いよいよ明日、6月30日(土)から新生・東京都美術館で始まります。



細かい内容は後日改めてまとめるとして、今日は手短かにプレス内覧の様子でも。

企画展の会場は三層構造。入口は通常通りのB1。まずは美術館の歴史を何点かの作品でおさらいした後、ホーイエン、ライスダールなどの風景画へと続きます。


第1章「美術館の歴史」展示室風景

出品数は約50点です。館の広さからすれば少なめということもあり、その分全体的にゆったりとした作りになっていました。


「真珠の耳飾りの少女」展示室風景

一つ上がって1階がフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」。早くも誘導列用のロープまで完備されています。行列前提の展示?!


ヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」1665年頃

貴重な傑作のために特別にあしらわれた空間。広々とした展示室にただの一点、燦然と輝く永遠の微笑み。大きなガラスケースにおさめられ、それこそモナリザばりの展示でした。

フェルメールの次は、今回さり気なく主役のレンブラント(実に6点も来日!)を含む肖像画へと続きます。またさらに一つフロアをあがると最後の2階のスペースです。ここではファブリティウスやブリューゲル(父)、それにステーンやホーホなど、静物、風俗画が展示されていました。

なお以前の都美館リニューアルの記事にもまとめましたが、全面刷新の企画展示室、かつての面影はまるで全くありません。



階の移動は全てエスカレーター、もしくはエレベーターです。また一見、エスカレーターが一方向しかないので、順路を戻れないかと思ってしまいますが、エレベーターを使えば各階の上下移動は可能。順路の逆、例えば最後の2階からフェルメールのある1階への移動も問題ありませんでした。



最後に待ち構えるのは、未だ美術展では見たことないほどに充実した特設ショップ。(利用には入館料が必要です。お財布を持ってご入場下さい。)



展覧会グッズに限らず、珍しいオランダグッズ、そして現地の自転車まで販売されています。



定番のクリアファイルにハガキ、また人気のミッフィーやらナノブロックを目当ての方も多いかもしれませんが、ここはやはり「マウリッツハイスへの道プロジェクト」でもお馴染みの我らが「青い日記帳」のコラボグッズを絶賛推奨!



堂々完成して現在販売中なのは二種類。上質感のある革製のキーホルダーと大きめのビアグラス。ともにフェルメールのステンドグラスがモチーフとなっています。是非とも手にとってご覧ください。

ちなみに会場内の余裕ある構造、裏を返せば混雑を予想しての作りでもあります。


第4章「肖像画とトローニー」展示室風景

キャッチーなコピーで物議を醸した広告など、メディア等への露出も多く、既に注目度満点。観覧はともかく会期の早めがベストですが、金曜の夜間開館(20時まで)を利用されるのもいいかもしれません。(また経験上、上野は出足が早く、朝は意外と混雑します。)

また平日利用可であれば、通常閉館日にも関わらず特別に開館する7月2日の月曜日も狙い目となりそうです。

「マウリッツハイス美術館展」、明日、6月30日(土)、午前9時30分に開幕します!

*展覧会の印象、個々の作品についての感想はまた後日まとめます。

「マウリッツハイス美術館展」 東京都美術館
会期:6月30日(土)〜9月17日(月・祝)
休館:月曜日。(7月2日、16日は開室。7月17日は休室。)
時間:9:30〜17:30 *金曜日は20時まで。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

7月の展覧会・ギャラリーetc

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今年は比較的梅雨らしい天気が続くような気もします。7月中に見たい展覧会などをリストアップしてみました。

展覧会

・「紅型 BINGATA:琉球王朝のいろとかたち」 サントリー美術館(〜7/22)
・「松本竣介展」 神奈川県立近代美術館葉山(〜7/22) 
・「祭 MATSURI 遊楽・祭礼・名所」 出光美術館(〜7/22)
・「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子:おへその庭」 原美術館(7/12〜8/19)
 #作家トーク 出演:安藤正子 7/14 14:00〜 定員80名。無料(要入館料)。要事前申込。
・「2012イタリア・ボローニャ 国際絵本原画展」 板橋区立美術館(〜8/12)
・「応挙の藤花図と近世の屏風」 根津美術館(7/28〜8/26)
・「村山知義の宇宙」 世田谷美術館(7/14〜9/2)
 #講演会「村山知義のベルリン1922」  講師:五十殿利治(筑波大学芸術系教授) 7/21(土) 14:00〜 当日10:00より整理券配布。
・「ストラスブール美術館展」 横須賀美術館(7/21〜9/2)
・「船田玉樹展」 練馬区立美術館(7/15〜9/9)
 #コンサート「幻の古楽器 七弦琴コンサート」 奏者:楊鵬(中国七弦琴呉派伝人) 7/28(土) 15:00〜 要観覧券
・「藤浩志の美術展」 3331 Arts Chiyoda(7/15〜9/9)
・「猪熊弦一郎展」 そごう美術館(7/26〜9/9)
・「具体:ニッポンの前衛 18年の軌跡」 国立新美術館(7/4〜9/10)
 #シンポジウム「『具体』再評価の過去と現在」 出演:河崎晃一(インディペンデント・キュレイター)、ミン・ティアンポ(カールトン大学准教授、グッゲンハイム美術館「具体」展共同キュレイター)他 7/14(土)13:00〜 通訳付 定員260名、先着順。
・「草原の王朝 契丹」 東京藝術大学大学美術館(7/12〜9/17)
・「アール・デコ 光のエレガンス」 パナソニック汐留ミュージアム(7/7〜9/23)
・「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館(7/14〜9/23)
 #トーク「20世紀末・日本の美術」 出演:中村ケンゴ×眞島竜男×永瀬恭一 7/28(土) 15:00〜 定員100名(先着順) 要当日観覧券
・「二条城展」 江戸東京博物館(7/28〜9/23)
・「東京都美術館ものがたり/Arts&Life:生きるための家」 東京都美術館(7/15〜9/30)
・「Future Beauty 日本ファッションの未来性」 東京都現代美術館(7/28〜10/8)
・「ドビュッシー 音楽と美術」 ブリヂストン美術館(7/14〜10/14)
 #土曜講座「ドビュッシー、印象派と象徴派のあいだで」 講師:新畑泰秀(ブリヂストン美術館学芸課長) 7/28(土) 14:00〜 聴講料400円(受付にて販売中)
・「アラブ・エクスプレス:アラブ美術の今を知る」 森美術館(〜10/28)


ギャラリー

・「朝海陽子:Chords」 無人島プロダクション(〜7/14)
・「佐藤亮太・原田郁」 アルマスギャラリー(〜7/14)
・「市橋織江:IMPRESSIONNISME」 ポーラ ミュージアム アネックス(〜7/16)
・「八重樫ゆい:初夏と習慣」 MISAKO & ROSEN(〜7/22)
・「文谷有佳里:なにもない風景を眺める 無常の情景」 Gallery Jin Projects(〜7/22)
・「デヴィッド・リンチ展」 渋谷ヒカリエ8/ARTGALLERY(〜7/23)
・「藤井秀全:Staining」 リクシルギャラリー(7/2〜7/26)
・「平野薫:Re-Dress」 SCAI(〜7/28)
・「五木田智央:Variety Show」 タカ・イシイギャラリー(〜7/28)
・「吉田晋之介:知らぬ未来と忘れる過去」 GALLERY MoMo 両国(〜7/28)
・「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.3 安藤陽子」 ギャラリーαM(〜7/28)
・「児玉香織:方眼紙と線」 ラディウムーレントゲンヴェルケ(7/4〜7/28)
・「TWS-Emerging 伊藤純代・あべゆか・及川さとみ・唐仁原希」 TWS本郷(7/7〜7/29)
・「山口藍・PIP&POP」 スパイラルガーデン(7/19〜8/3)
・「多和田有希:Burnt Photographs」 TARO NASU(7/6〜8/4)
・「関口正浩:絵の印象」 児玉画廊東京(7/7〜8/11)
・「岡田裕子:No Dress Code」 ミヅマアートギャラリー(7/11〜8/11)
・「仲條正義:忘れちゃってEASY思い出してCRAZY」 資生堂ギャラリー(6/23〜8/12)
・「ペッカ・ユルハ+ハンナレーナ・ヘイスカ+サミ・サンパッキラ:AWAKENING」 エスパス ルイ・ヴィトン東京(〜9/9)

さて今月は美術はおろか、音楽ファン待望の展覧会がいよいよ始まります。



「ドビュッシー 音楽と美術」@ブリヂストン美術館(7/14〜10/14)

ドビュッシーの芸術を美術の観点から紹介する展覧会、先行したオランジュリーでも好評だったとのことですが、ブリヂストンではそれを超える規模での開催となります。

「ドビュッシー展」(ブリヂストン美術館)記者発表会

同館では異例とも言える特設サイトも完成し、各種イベントなども目白押しです。今月はまずこの展示を一推しにしたいと思います。

さて下のチラシの図版の作品、どこかで見覚えのある方も多いのではないでしょうか。



「船田玉樹展」@練馬区立美術館(7/15〜9/9)

これぞ昨年の東近美、「日本画の前衛」展でのチラシ表紙を飾った船田玉樹に他なりませんが、その孤高とも称される画家の全容を紹介する一大回顧展が、練馬区立美術館で開催されます。

出品作は200点。いわゆる前衛だけではなく、晩年へ至る古径や御舟を思わせる作品までを網羅した展示となるそうです。ここのところ意欲的な企画の続く練馬区美です。大いに注目したいと思います。

イエローを大胆に配したチラシも目を引きます。国立新美術館での具体展も見逃すわけにはいきません。



「具体:ニッポンの前衛 18年の軌跡」@国立新美術館(7/4〜9/10)

私自身、さり気なく具体好きであったりもしますが、具体表現との出会いはかなり前、確か2004年の兵庫県美での具体展のことでした。その時に受けた何とも言い難い感動は今も忘れられません。会期早々に駆けつけるつもりです。

それでは今月も宜しくお願いします。

「マウリッツハイス美術館展」 東京都美術館

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東京都美術館
「マウリッツハイス美術館展」 
6/30-9/17



東京都美術館で開催中の「マウリッツハイス美術館展」の報道内覧会に参加して来ました。

しばらく前から首都圏各地の交通広告を埋め尽くした「世界一有名な少女」。

最近ではブームの発端ともなった大阪の「フェルメールとその時代展」(2000年)でも出品されましたが、以来12年、再びフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が東京都美術館へとやって来ました。


第1章「美術館の歴史」展示室風景

東京では約30年ぶりの公開というこの少女のビジュアル、ともかくインパクトが強く、さもフェルメール展と思ってしまいがちですが、実際はそうではありません。

出品数50点の殆どは17世紀オランダ・フランドル絵画、うち6点をなんとレンブラントが占めています。

構成は以下の通りでした。

第1章 美術館の歴史
第2章 風景画
第3章 歴史画(物語画)
第4章 肖像画と「トローニー」
第5章 静物画
第6章 風俗画

オーソドックスなジャンルでの展示です。

都美館のスペースを鑑みればやや少ない作品数ということもあってか、会場はゆったりとした作りとなっていました。

冒頭、マウリッツハイス美術館の歴史をおさらいした後に登場するのは、オランダ絵画でもとにかく人気のある風景画の数々です。


左:ヤン・ファン・ホーイエン「ホーホエルテン近郊のライン川の眺望」1653年

そしてここではヤーコブ、サロモンのロイスダールの3点が忘れられません。

ヤーコブの「標白場のあるハールレムの風景」における水辺と帆船の美しい質感、とりわけ光を受けて透き通るような帆の繊細なタッチなどに惹かれる方も多いのではないでしょうか。

一方で山城を描いたサロモンの「ベントハイム城の眺望」も優品です。


左:ヤーコブ・ファン・ライスダール「ベントハイム城の眺望」1652年-1654年頃

このドイツの城を彼は12点ほど描いたそうですが、ともかくは堂々と聳え立つ城、そしてその下の奇岩とも言える岩の重厚感、さらには丘を覆う木々の細やかな筆遣いなど、画家ならではの物質感のある表現を味わうことが出来ました。

また一見、無人にも見えますが、実は右手方向に開ける小径には人、一番手前にはおそらくは犬を散歩する親子連れの姿が描かれています。

ロイスダールからは風景の迫力とともに、どこか箱庭を覗き込むかのような感覚を覚えることもありますが、そうした点でもまた興味深い作品でした。


右:ペーテル・パウル・ルーベンス「聖母被昇天(下絵)」1622-1625年頃

続いての歴史・物語画ではまずルーベンスの「聖母被昇天」が見逃せません。

実はこの作品は下絵ですが、だからこそルーベンス本人の素早い筆致、そしてそこから生まれる躍動感のある群像表現を味わえるのではないでしょうか。

またこのセクションでは点数からしても展覧会の主役、レンブラントの初期作、「シメオンの讃歌」も重要です。


左:レンブラント・ファン・レイン「シメオンの讃歌」1700年頃

黒に茶褐色を沈み込ませた暗がりの空間に浮かび上がるのは、幼きイエスを抱きかかえ、感極まった様子で歌うシメオンの姿です。

よく目を凝らすと背景には多くの人も描かれ、かなり奥行きがあることも分かりますが、レンブラント一流の明と暗のドラマティックな対比、そしてシメオンの着衣などにも見られる初期作ならではの細かな筆致には感心させられました。


右:ヨハネス・フェルメール「ディアナとニンフたち」1653-1654年頃

ちなみに今回、フェルメールは「真珠の耳飾りの少女」だけではなく、もう一点、同館で2008年に開催されたフェルメール展でもお目見えした「ディアナとニンフたち」も出品されています。

まるでイタリア絵画を思わせる優美な女性たち、一見するところ後のフェルメール作とは似ていませんが、手前の金色の真鍮のたらいのメタリックな質感、右手奥の黒服を着た女性のすらっとした立ち姿など、どこか中・後期作を連想させる面もあるのではないでしょうか。


第4章「肖像画とトローニー」展示室入口

そしてお次が目玉の「真珠の耳飾りの少女」です。

ともかく本作、知名度抜群、人気の一点ということで、展示の仕方も別格です。


「真珠の耳飾りの少女」展示室風景

広々とした展示室にただの一点、手前にはそれこそテーマパークばりの誘導列が控えています。

また作品は半円状の停止線の向こうのガラスケース中に収められています。やや作品との距離があるせいか、細かなタッチを味わうのは難しいかもしれせんが、幸いなことにケースの写り込みはあまりありません。作品の魅力を知るには不足ない展示でした。


ヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」1665年頃

さてその少女、一見して感じたのは、図版などより遥かに小柄で幼く見えること、そして定まるようで定まらない視線、特に不自然なまでに偏った左眼の向きです。

またターバンの青は思いの外に白が強く、逆に黄色く垂れるそれは、後ろ肩の影からすると、もはやあり得ないほどに光っています。

あどけない様で開いた口には小さな白いハイライトがあり、それが眼球の中のハイライトと呼応しています。

また驚くほど巨大な真珠はほぼシルバーです。襟の白とは完全に塗り分けられています。

肖像画ではないトローニーだからこそのモデルとの曖昧な関係、またさらに少女自体の捉え難い面持ち。

「フェルメールへの招待/朝日新聞出版」

フェルメールの傑作というよりも異色作とも言える本作、これまで多くの人々の熱い視線を浴びて来たのにも納得させられるような不思議な魅力をたたえていました。

さてこの少女の後こそ本展のハイライトとしても過言ではありません。

それは6点も揃っているレンブラントのうち、工房作を含む4点の肖像画、トローニーが展示されているからです。

中でもどこか達観したように穏やかにこちらを見据える最晩年の「自画像」には心打たれます。


左:レンブラント・ファン・レイン「自画像」1669年

黒服に身を纏った画家は意外なほどに力強く、目元にこそ憂いを感じるものの、引き締まった口元からは自信すら感じられないでしょうか。

確かに老いてはいるものの、ふくよかでかつ暖色を帯びた顔は死を前にしているとは到底思えません。レンブラントの最後に達した境地、その迫力すら伝わる作品でした。

静物画ではだまし絵風とも言えるファブリティウスの「ごしきひわ」から目を離せません。


左:カレル・ファブリティウス「ごしきひわ」1654年

1654年のデルフトの爆発事故により命を落とし、同時に多くの作品も失われてしまったという半ば伝説の画家ファブリティウス。

その小品ではありますが、少し離れると鳥や手前の止り木が実際浮かび上がってくるかのような迫真性を持っています。


右:アーブラハム・ファン・ベイエレン「豪華な食卓」1655年以降

もちろんではさりげなく画家自身の姿が水差しに写り込む「豪華な食卓」(ベイエレン)、また蝋燭の炎が物悲しげな「燃えるろうそくのある静物」(クラースゾーン)など、重々しい静物画も見応え十分ですが、軽妙なタッチによって描かれたこの小鳥こそ、静物画の隠れた主役として捉えても良いかもしれません。

ラストの風俗画では一にも二にもヤン・ステーン、とりわけ順路の最後に掲げられた「親に倣って子も歌う」が一押しです。


ヤン・ステーン「親に倣って子も歌う」1668-1670年頃

風俗画としては異例とも言えるサイズ、まずはその大きさに圧倒されるかもしれませんが、やはり笑いそして語り、また飲み、それこそ半ば乱れるかのように集う人々の生き生きとした表現は画家の真骨頂だと言えるのではないでしょうか。

もちろんこの作品、単に家族の団らんを描いたのではなく、「こう遊ぶと後で痛い眼にあう。」といった教訓的な意味を持ち得ていますが、それをも忘れさせるほど放蕩や怠惰の誘惑、そしてその魔力を感じてなりません。

ちなみに画中でにやけた父親は画家本人なのだそうです。本人自ら悪い手本を見せるというこの作品、図録にも記載がありましたが、だからこそより高いリアリティーを生み出していると言えそうです。


第6章「風俗画」展示室風景

初めにも触れましたが、出品数は50点弱と、この手の大型企画展ではかなり少なめです。

上野といえば、もう一つの真珠を擁する西洋美術館のベルリン国立美術館展も話題ですが、そちらは北方やイタリア絵画との関係を素描から彫刻を通して横断的に提示しているのに対し、このマウリッツ美術館展は17世紀オランダ・フランドル絵画のみに焦点を当てています。

同じフェルメールを掲げながらも似て非なる二つの展覧会、ここは別々に楽しむべきものかもしれません。


ミュージアムショップ

なお速報記事でも触れましたが、ともかく本展はショップが極めて充実しています。


「青い日記帳」×マウリッツハイス美術館展コラボグッズ

定番の絵ハガキやクリアファイルから青い日記帳はじめとするコラボグッズ、さらには何と自転車へ至るオランダ関連商品までがずらりと揃っています。


ミュージアムショップ

これほどのスケールのミュージアムショップ、私自身記憶にありせん。思わず長居してしまいました。

さて混雑の情報です。まず有用なのは公式サイトです。トップページで待ち時間が逐次更新されています。

「マウリッツハイス美術館展」公式サイト@mauritshuis2012

なお初日の土曜、また翌日の日曜ともに早速入場制限がかかり、10〜40分程度の待ち時間が発生しました。

「美術手帖2012年6月号増刊/特集フェルメール/美術出版社」

初日から待ち時間が出来る展覧会など滅多にありません。幸いにも金曜日の夜間開館がありますが、この出足からすると、会期中盤以降は大変な混雑となりそうです。

「マウリッツハイス美術館展:公式ガイドブック/朝日新聞出版」

まずは早めのご観覧をおすすめします。9月17日までの開催です。

「マウリッツハイス美術館展」 東京都美術館
会期:6月30日(土)〜9月17日(月・祝)
休館:月曜日。(7月2日、16日は開室。7月17日は休室。)
時間:9:30〜17:30 *金曜日は20時まで。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

「八重樫ゆい:初夏と習慣」 MISAKO & ROSEN

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MISAKO & ROSEN
「八重樫ゆい:初夏と習慣」 
6/24-7/22



MISAKO & ROSENで開催中の八重樫ゆい個展、「初夏と習慣」へ行ってきました。

上のDM作品を見る限りでは、とてもフラットでかつ色味の落ち着いた抽象画を連想させる八重樫ゆいの作品。

確かに抽象であることは間違いありませんが、実際に作品の前に立つと意外なほどに温もり、また生々しさを感じはしないでしょうか。

というのもその表面に塗られた絵具の質感です。

個々の色はそれぞれ薄い絵具の層になって積み重なっています。色と色、面と面の間には、図版などでは到底分からない厚み、またボリュームがありました。

また作品のモチーフとして布生地のパターンを引用することがあるそうですが、そのイメージはもちろんのこと、どこか触りたくなるような表面の質感も、生地に近いものがあるかもしれません。

形よりも色がリズムを生み出しています。丹念に塗り込まれた色同士の織りなすハーモニー、控えめながらもどことない心地良さを感じました。

7月22日まで開催されています。

八重樫ゆい「初夏と習慣」 MISAKO & ROSEN
会期:6月24日(日)〜7月22日(日)
休廊:月曜、祭日
時間:12:00〜19:00(火〜土)、12:00〜17:00(日)
住所:豊島区北大塚3-27-6
交通:JR線大塚駅北口より徒歩約10分。

「バーン=ジョーンズ展」 三菱一号館美術館

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三菱一号館美術館
「バーン=ジョーンズ展 装飾と象徴」
6/23-8/19



三菱一号館美術館で開催中の「バーン=ジョーンズ展」へ行って来ました。

英雄ペルセウスに聖ゲオルギウス、ピグマリオンにいばら姫と、古代ギリシャ物語や中世文学などのモチーフを取り入れ、19世紀末のヴィクトリア朝絵画の頂点を築いたバーン=ジョーンズ(1833-98)。

その耽美な画風には大いに惹かれるところですが、断片的に作品に接することはあれども、まとまった形で見る機会は一度もありませんでした。


エドワード=バーン=ジョーンズ「フローラ」1868-84年 郡山市立美術館

まさにイギリス美術ファン待望の展覧会です。

世界屈指とも言われるバーミンガム美術館のコレクションを中心に、国内外より集められたバーン=ジョーンズの絵画、資料、全75点が一堂に会していました。

冒頭はバーン=ジョーンズの制作の出発点、定番のギリシャ物語からアーサー王、モリスの長編詩などのモチーフが扱われます。

中でも圧巻なのは彼が終生手離さなかったという物語集、ディグビの「騎士道の誉」に基づく「慈悲深き騎士」です。


エドワード=バーン=ジョーンズ「慈悲深き騎士」1863年 バーミンガム美術館

教会にて木造のキリストが騎士へ祝福を与えるというこの主題、全体を覆うグリーンの美しさに目を奪われますが、甲冑の光沢感、周囲の幻想的なまでの草花など、早くも画家の魅力を味わえる作品だと言えるのではないでしょうか。

またバーン=ジョーンズとは切っても切り離せない関係にあるモリスの最初の物語詩、「クピドとプシュケ」の主題による「怠惰の戸口の前の巡礼」も力作です。

彼らは同じオックスフォード大学の学生時代、一緒になってチョーサーを読んだというエピソードも残っているそうですが、そこから一話、モリスに依頼されてデザインを手がけた「巡礼を導く愛」のタペストリーも見どころの一つとなりそうです。

さて得意とする英雄物語ではまず聖ゲオルギウスが圧巻です。

異教を象徴するという龍にまたがり、剣と槍を刺しこんで退治する「闘い:龍を退治する聖ゲオルギウス」の迫力、とりわけ剣が龍の口を突いて血の滴る様の生々しさは一種、異様ではないでしょうか。

実はバーン=ジョーンズは画家になる前、聖職を志していたそうですが、この真に迫る描写も、何かそうした面と関係するのかもしれません。


エドワード=バーン=ジョーンズ「大海蛇を退治するペルセウス」1882年頃 サウサンプトン市立美術館

ハイライトはペルセウスとして問題ありません。

政治家の新居の装飾な基づく2点、「メドゥーサの死 連作ペルセウス」と「果たされた運命:大海蛇を退治するペルセウス」は、その動的でかつドラマティックな描写に思わず打ちのめされてしまいます。

メデューサの首を仕留めるペルセウスを描いたのが「メドゥーサの死 連作ペルセウス」です。


エドワード=バーン=ジョーンズ「メドゥーサの死」1882年 サウサンプトン市立美術館

縦長の構図を最大限に活かし、今にも飛び上がろうとするペルセウスを躍動感のある様で表現しています。

チラシ表紙にも掲げられた「果たされた運命:大海蛇を退治するペルセウス」では、ともかくペルセウスへとぐろを巻いて絡みつく怪物の描写に驚かされるのではないでしょうか。

左手で怪物を抑えながら、剣を突こうとするペルセウス、その怪物と渾然一体となった濃密な空間には全く隙がありません。

なおこのペルセウス主題でらチョークを使った甲冑の習作も魅力的です。その劇的な描写はそれこそ明日、7/4に、東京新聞で高橋館長との紙上対談が掲載される荒木飛呂彦のジョジョ風。またそちらも興味深い内容となりそうです。

さてぐっと抑えられた照明に美しく浮かび上がるのは、バーン=ジョーンズの題材でもとりわけ重要だという「眠り姫」から「眠り姫 連作いばら姫」です。


エドワード=バーン=ジョーンズ「眠り姫」 1872-74年頃 ダブリン市立ヒュー・レイン美術館

横たわって眠りこける女性はそれこそオフェイリアの姿も連想させますが、周囲の野ばらなどの草の細密な表現からも目が離せません。

また画家に特徴的な衣服やシーツの彫の深い陰影も際立ちます。永遠を象徴する砂時計を枕元に掲げて眠りこける女性の甘美な姿には見惚れてしまいました。

なおバーン=ジョーンズはイタリアに憧憬を抱いていて、実際に何度か旅をした他、特にボッティチェリやミケランジェロを讃美していたことでも知られています。


エドワード=バーン=ジョーンズ「運命の車輪」1871-85年 ナショナル・ギャラリー・オヴ・ヴィクトリア

それこそ優美な女性はボッティチェリを、また一転して「運命の車輪」などにおける隆々たる肉体美はミケランジェロを思わせはしないでしょうか。

例えばイギリスの伝統的な物語を多く取り入れた主題だけでなく、絵画表現上において彼が如何なる方向を目指していたのかを見るのも面白いかもしれません。

さて展覧会のラストを飾るのも永遠の眠りです。

バーン=ジョーンズが晩年に描いたこの「聖杯堂の前で見る騎士ランスロットの夢」、眠りこける騎士ランスロットは画家自身の姿とも重なります。

寒々しいまでの木々、そして奥の暗がり、また後ろを向いて佇む馬など、どことなく寂しげな光景は、まさに夢幻の世界ではないでしょうか。

「眠りこそ聖なる永遠性の象徴。」(図録より引用。) としていたバーン=ジョーンズは、この作品を描いた2年後、65歳の生涯を閉じました。

初めに「まとまって見る機会は一度もない。」と書きましたが、それもそのはず、実は本展こそ日本初の画家回顧展だそうです。


エドワード=バーン=ジョーンズ(原画)/モリス商会(制作)「東方の三博士の礼拝」1894年(原画:1888年) マンチェスター・メトロポリタン大学

しかしながら意外や意外、まだ会期早々だからなのか、館内は思いの外に空いています。多岐に渡る主題を整理し、充実した作品で画業を辿る回顧展、もうしばらくは望めそうもありません。

「もっと知りたいバーン=ジョーンズ/東京美術」

8月19日までの開催です。断然におすすめします。

「バーン=ジョーンズ展 装飾と象徴」 三菱一号館美術館
会期:6月23日(土)〜8月19日(日)
休館:毎週月曜。祝日の場合は翌火曜休館。(但し8月13日は開館。)
時間:10:00〜18:00(火・土・日・祝)、10:00〜20:00(水・木・金)
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。

「ルネサンス 歴史と芸術の物語」(光文社新書)

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池上英洋著「ルネサンス 歴史と芸術の物語」(光文社新書)を読んでみました。



15世紀前後の西洋において古典を復興しようとした文化的潮流。ボッティチェッリやレオナルド、そしてミケランジェロらが活躍した時代。

私自身「ルネサンス」とは何かと聞かれて思いついたのはこの程度。

しかしながら何故それが起きたのか、そもそもこの時代に古典がどうして見直されたのか、さらには文化だけでなく社会・政治的にはどのような状況にあったのか。

こう問われれば、直ぐさま回答に窮してしまいます。

そんな「知っているつもりでいるルネサンス」(P.6)を、美術の範疇だけでなく、社会構造まで踏み込んで、しかも分かりやすく解き明かしたのが「ルネサンス 歴史と芸術の物語」。

著書はお馴染み美術史家で國學院大学准教授の池上英洋先生。いつもながらの親しみやすい語り口、普段接しておられる学生とのエピソードの冒頭からぐっと引込まれました。

本書の構成は以下の通りです。

第1章 十字軍と金融
第2章 古代ローマの理想化
第3章 もう一つの古代
第4章 ルネサンス美術の本質
第5章 ルネサンスの終焉
第6章 ルネサンスの美術家三十選

いきなり十字軍に金融とくれば、有りがちなルネサンス美術解説本ではないことがお分かりいただけるかもしれません。

いわゆる「聖地」奪回のため、ヨーロッパ全土から集まった群衆は一路エルサレムを目指す。

海の通り道でもあったヴェネツィアは関税システムを整備することで富を手にし、またフィレンツェは人の移動ともに増大した物流を用いた加工貿易で栄えていく。

そうした内容から本書は出発します。


図17:ジローラモ・マジーニ「コーラ・ディ・リエンツォのモニュメント」1887年

結果的にこうした商業活動の進展を基盤に、動揺しつつあった中世の二重権力システム(教皇と教会)を隙をついたのがローマの政治家コーラです。

また彼の共和政への志向はもちろん、当初彼を支えた知識人のペトラルカや詩人のボッカッチョらが古代ローマ、またそれを通してギリシャへの熱い視座を持っていたことから、古典回帰、復興の時代の扉が徐々に開かれていくことになります。

さてルネサンスの特質とは。

まず重要なのは人文主義です。ここではその準備段階としてルネサンスの前、いわゆるプロト・ルネサンスについて語られます。

先に揚げたボッカッチョは「デカメロン」において人間の俗をこれまでにはないほど生々しく描きだしました。


図23:ジョット・ディ・ボンドーネ「磔刑像」1295年頃

美術の面においても、それまでは超人的な存在として描かれたイエスが、例えば聖フランチェスコの物語を経由して、ジュンタからジョットへと至る「人間的」なイメージへと変化していく様が紹介されます。

特に分かりやすいのが「磔刑図」の変遷、イエスがまさに人間そのものに近い形で描かれていくではありませんか。


図57:フラ・アンジェリコ「受胎告知」1440年代

第4章にてマザッチョやアンジェリコなどの作品を挙げながら、ルネサンス美術の3つの本質、「空間性」、「人体理解」、「感情表現」をひも解いていますが、こうした初期段階での表現の変化も、またルネサンス理解の上でとても重要なポイントでした。

また面白いのが古典、ギリシャ文化は十字軍によってイスラム圏から逆流していったことです。

当時のヨーロッパにおいてギリシャを初めとする古代地中海文化は、ゲルマンの侵入により長い間遺物とされ、忘れられていました。

一方でイスラムはもちろん、ビザンティンではそれが一部継承されています。

つまり十字軍が切っ掛けとなり、既に自分たちが忘れていた古代ギリシャを再発見したというわけです。ルネサンスは単にイタリアのみではなく、イスラムをも跨いだ大きなスケールで展開していました。


図36:ヤコポ・ポントルモ「コジモ・デ・メディチの肖像」1510年代

またルネサンス美術を支えたメディチ家が言わば実力者としては後発であったこと、彼らがいかにして富と権力を集中させていたかについても簡潔に触れられています。

それに「商業の世紀」ルネサンスを経た結果、個人で商業を行う人々が増大し、結果それまで労働力として扱われなかった女性に教育の機会が与えられたという指摘も興味深いのではないでしょうか。


図68:クエンティン・マセイス「両替商とその妻」1514年

いわゆる手紙を書いたり読む女性が絵画上のモチーフとして登場するのはルネサンス以降でもあるのです。

最後は盛者必衰ならぬルネサンスの終焉です。

コジモ以降のイタリアの体制の変化に加え、大航海時代や宗教改革などがルネサンスを引導を渡します。西洋のパワーゲームに敗れたイタリアの衰退とともに、ルネサンスは終わりを告げました。

もちろん図版も多数掲載、いずれもがカラーであるのも嬉しいところです。

大きな「社会のうねり」(P.234)という変革期にあったルネサンス、かくもこれほどまでに複層的な社会構造があったとのかという発見と驚きを感じてなりませんでした。

「ルネサンス 歴史と芸術の物語/池上英洋/光文社新書」

ルネサンス美術を政治や宗教の視点から読み解く池上英洋著の「ルネサンス 歴史と芸術の物語」(光文社新書)、是非書店にてお手にとってご覧ください。

「西洋美術史入門/池上英洋/ちくまプリマー新書」

なお余談ですが池上先生、ツイッターをはじめられました。(@hidehiroikegami)こちらも要フォローです!

「橋本雅也 殻のない種」 ロンドンギャラリー白金

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ロンドンギャラリー白金
「橋本雅也 殻のない種」
7/7-7/25



ロンドンギャラリー白金で開催中の橋本雅也個展、「殻のない種」へ行ってきました。

独学で彫刻を学び、今では人里離れた無住の地にて制作を行うという橋本雅也。



乳白色を帯びた美しいスイセンやサクラなどの草花の数々。薄い花弁に緩やかな曲線を帯びた葉、いずれも精巧な彫刻自体に感心させられる方も多いかもしれません。

それがまた素材を知ってさらなる驚きへと変化します。



何とそれは鹿です。つまり橋本自身、猟師とともに足を運び、雪山にて仕留めたという一頭の鹿、その骨と角が、今回の作品の全ての源となっています。(上の鹿がまさにそれです。)

ともかくも繊細でしなやかな様子、そして質感は、おおよそ本来的に曲げることすら難しい骨とは思えません。



またモチーフである花や草が持ち得ていた色は、当然ながら寡黙なモノクローム、骨自体の白へと移り変わっています。

何時か朽ち果ててしまう草花が既に「死」を踏まえた骨であるということ、それを思った時、何ともいい難い儚さを感じてなりませんでした。

それにしても会場はお馴染みのロンドンギャラリー、当然ながら古美術と交えた魅力的な展示になっています。



花の向こうにお目見えするのはまさに百花繚乱、華麗な等伯の屏風絵「四季花鳥図」です。



そして古木の上のホトトギスの間には、同じく等伯の「寒江渡舟図」が掲げられているではありませんか。



ちなみに素材となった鹿ですが、基本的には全て食し、骨や角も無駄にすることがないそうです。



生き物の死と真っ当に向き合う橋本の真摯な姿勢、それは作品の凛とした佇まいからも感じられるかもしれません。

7月25日まで開催されています。

「橋本雅也 殻のない種」 ロンドンギャラリー白金
会期:7月7日(土)〜7月25日(土)
休廊:日・月・祝 *但し7/12(木)は休廊。
時間:11:00〜18:00
住所:港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス4階
交通:東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅3番出口より徒歩10分。東京メトロ日比谷線広尾駅1番出口より徒歩15分。

「伊東深水 南方風俗スケッチ展」 市川市芳澤ガーデンギャラリー

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市川市芳澤ガーデンギャラリー
「伊東深水 南方風俗スケッチ展〜市川市収蔵作品より」
6/16-7/22



芳澤ガーデンギャラリーで開催中の「伊東深水 南方風俗スケッチ展」へ行ってきました。

近代日本画の巨匠、伊東深水の真骨頂といえば艶やかな美人画に他なりませんが、素描や水彩の優品をまとめて見る機会は意外と少なかったかもしれません。

深水は1943年から約4ヶ月間、海軍報道班員としてインドネシアやシンガポールへ赴き、そこで現地の風俗を捉えた素描を多数描きました。

本展はそのような深水の南方でのスケッチのみに焦点を当てています。



出品数は110点。ワンフロアのみの小さなスペースですが、思いの外に見応えがありました。

作品は時系列、ようは深水が廻った土地、島の順に並んでいます。



現地の風俗、特に建物や暮らしをよく伝える作品の一例として「マッカサル郊外にて写」(昭和18年)が挙げられるのではないでしょうか。

マッカサル郊外、水辺の上の高床式の住居を描いていますが、エメラルドグリーンの水面しかり、深水の優れた水彩表現を伺うことも出来ます。



また花のスケッチも南国ならではの鮮やかな色を伝えてくれます。

女性の肖像など、人物を捉えたスケッチには、いかにも深水らしいアクの強いタッチもありましたが、こうした風景などからは本画とは異なるあっさりとした表現を見ることが出来ました。

さて興味深いのが、深水が先住民の人々の様態を写した作品です。



中でも山岳地帯に生活の基盤を持つトラジャ族を捉えたスケッチには目を奪われます。

またここで重要なのは深水がそうした人々についての印象を言葉に残していることです。

これはトラジャ族に限りませんが、例えば衣装の色や生地、それに舟の積荷、さらには祭りの様子などを、事細かに記しています。

もちらんそれらには時にオリエンタリズム的な視点も交じるわけですが、深水がどのように南方を捉えていたのが分かる資料として重要かもしれません。

さて今回の目玉というべきなのがスケッチと絵葉書の比較です。

つまり深水が描いたスケッチと、それ元に制作された当時の軍事郵便葉書があわせて展示されています。

その数は5点。これまでに他の展覧会で葉書とスケッチがバラバラに展示されたことはありましたが、今回のように見比べられる形での公開は初めてです。

さりげなく史上始めての比較展示、ここはじっくりと楽しみました。

最後には他の島々とは明らかに風俗の異なるバリが登場します。



バロンの踊りの奇抜な衣装に仮面、そして鮮烈な色自体も深水に強い印象を与えたのではないでしょうか。

ちなみに深水は4ヶ月の滞在中、約400枚のスケッチを描きましたが、うち270枚ほどをここ市川市が所蔵しています。

深水と市川との直接的な関係はなく、あくまでも深水の訪れたスマトラのメダンが姉妹都市であることから収集が始まったそうですが、近代日本画好きにとっては嬉しい企画と言えそうです。



7月22日まで開催されています。

*図版はいずれも伊東深水「南方風俗スケッチ」(1943年)より。

「伊東深水 南方風俗スケッチ展〜市川市収蔵作品より」 市川市芳澤ガーデンギャラリー
会期:6月16日(土)〜7月22日(日)
休館:月曜日(7/16は開館、7/17は休館)
時間:9:30〜16:30
住所:千葉県市川市真間5-1-18
交通:JR線市川駅より徒歩16分、京成線市川真間駅より徒歩12分。*市川駅北口に「市営無料レンタサイクル」(市川第6駐輪場)あり。

「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.3 安藤陽子」 ギャラリーαM

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ギャラリーαM
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.3 安藤陽子」
6/30-7/28



ギャラリーαMで開催中の「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.3 安藤陽子」へ行ってきました。

第一弾の山田七菜子、また第二弾の俵萌子しかり、強くまた激しい絵具の質感を押し出す絵画の展示が続いた「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」シリーズ。

打って変わって今回の第三弾、安藤陽子の作品は、抑制的でかつ朧げな光を放つ日本画です。



会場をぐるりと一周、ほぼ等間隔で並ぶのは、子どもから女性と、おおよそ若い世代を描いた人物の肖像です。

絹本着彩、いずれも先にも触れたように紛れもなく日本画ですが、不思議と背景に光源でもあるかのような独特の光をまとっていることに気がつきます。



この柔らかな光の秘密、一体何に由来するのかと作品へ近づいてみました。

すると支持体がフレームから言わば浮き出していることが分かるではありませんか。

ようは絹の裏は空洞です。それが作品に当たる光を透かせて、独特な光を生み出しているというわけでした。

さてこれらの人物、キュレーターの保坂がテキストでも述べたように、「悲しんでいるのか微笑んでいるのか。」よく分かりません。表情は実に曖昧です。



実際のところ作家の安藤は、比較的、親しい間柄にある人物をモデルに据えているそうですが、このどこか希薄な実在感と捉え難い浮遊感は、言わば西洋画のトローニーに近いものがあるのではないかと思いました。

繊細で透明感のある絵画平面、当然ながら実物と図版とはまるで異なります。質感は会場で見ないと分かりません。

【緊急企画・第二弾】αMトークイベント「徹底討論|本当に絵画は愛なのか?」
出演: 青山悟、今津景、梅津庸一、千葉正也、保坂健二朗
日時: 7月26日(木)19時〜
会場: gallery αM 予約不要・参加無料
*Ust中継予定→http://ustre.am/MaPd
7月28日まで開催されています。

「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.3 安藤陽子」 ギャラリーαM@gallery_alpham
会期:6月30日(土)〜7月28日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:11:00〜19:00
住所:千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。

「具体展」 国立新美術館

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国立新美術館
「具体−ニッポンの前衛 18年の軌跡」
7/4-9/10



国立新美術館で開催中の「具体−ニッポンの前衛 18年の軌跡」へ行って来ました。

「人のまねをするな。」、「これまでにはなかったものを作れ。」 。

それこそ「言うは易く行うは難し」ではありませんが、実際に取り組むとなるとそう簡単にいくものではないかもしれません。


吉原治良「黒地に赤い円」1965年 兵庫県立美術館

しかしながら今から遡ること60年前、一人の作家の号令の元、まさに奇想天外、これまでにはなかった表現で一時代を築き上げた芸術グループがいました。

それが具体です。リーダーは戦前から関西を拠点に前衛美術家として活動してきた吉原治良(1905-1972)。

1954年、吉原の「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示する。」を掛け声に、主に彼の居住していた芦屋の作家が集まり、新たなる芸術運動が始まりました。

構成は以下の通りです。

第1章 プロローグ 1954年
第2章 未知の美の創造 1955-1957年
第3章 ミスターグタイ=吉原治良
第4章 「具体」からGUTAIへ 1957-1965年
第5章 新たな展開 1965-1971年
第6章 エピローグ 1972年

展示は一冊の冊子、「具体」創刊号から始まります。

ここで吉原は今までの美術の概念にとらわれることなく、それでいてダダ的でもない、あくまでも前向きでかつ未知の表現を目指すことを高らかに宣言します。

当初の具体の活動は屋外でのパフォーマンスです。

芦屋公園を舞台に開催されたのは、「真夏の太陽にいどむ野外モダンアート実験展」と「野外具体美術展」です。

会場ではその一部が再現されていますが、時に大仰で、またそもそも一体何のためにあるのかすら分からないような作品は、確かに観客の好奇心を刺激したに相違ありません。

また双方向、ようは体験型の作品が目立つのもポイントです。

白い筒に入って空を見上げる村上三郎の「作品:空」(1956年)や、不安定な木を並べた嶋本昭三の「この上を歩いて下さい」(1955年)などは、おおよそ美術の範疇として捉えられるであろう領域を超えています。

さらに面白いのがアクション性です。

白髪一雄の「赤い丸太」(1955年)では、ひたすら作家が丸太へ釘を打ちつけた痕跡のみが残され、それがそのまま作品となっています。


白髪一雄「天雄星豹子頭」1959年 国立国際美術館

具体の魅力の一つに作家の執拗でかつ闇雲なまでの行為、またそれを裏打ちする熱い情念も挙げられますが、こうした初期のパフォーマンスにこそ顕著に現れていると言えるのかもしれません。

さて屋内の絵画表現においても具体は新境地を切り開きます。


嶋本昭三「作品」1955年 兵庫県立美術館

素材に一般的な絵具だけでなく、塗料や新聞紙などを用い、強い物質感を帯びた作品を次々と生み出しました。

また描き方も絵筆だけに収まりません。

その極地とも言えるのが金山明の「作品」(1957年)です。


金山明「作品」1957年 北九州市立美術館

なんとこの無数に乱れる線描、実は作家自らの制作した機械によって自動で引かれています。

それこそ具体の覇者、白髪一雄は絵具を足で塗りつけたことでも知られていますが、言わば絵画における「誰も思いつかなかった方法」は、多くの作家たちによって様々に繰り広げられていきました。

またそうした奇抜な絵画とも関係し、光や色に対して強い関心を持っていたのが、先だって都現美でも回顧展のあった田中敦子や山崎つる子などです。


田中敦子「作品」1960年 depot Anthony et Celia Denney aux Abattoirs, Toulouse

田中は色とりどりの蛍光管で作った「電気服」(1956年)での舞台パフォーマンスを行います。


山崎つる子「ブリキ缶」1955年 個人蔵

山崎つる子は並べたブリキの缶に光沢感のある塗料を塗り、ライトを当てるなどして色と光に鮮やかな作品を作りました。

会場では初期の舞台パフォーマンスを映像でも紹介していますが、それを見ると当時の雰囲気を味わえるかもしれません。

さてこうした具体に大きな転機をもたらしたのが、フランスの美術批評家のミシェル・タピエです。

1960年頃に来日したタピエは具体の活動に関心を抱き、パリやNYでも紹介したいと考えます。

そこでポイントとなるのがパフォーマンスの扱いです。

当時はまだ日本人が海外へ出ることもままならなかった時代、それこそ作家自身がNYなりに向かうのは困難を極めます。

よってタピエは持ち運びの容易な絵画に目をつけたわけです。

タピエによって具体はGUTAI、つまり国際的にも知られることになりましたが、彼との出会いによって活動は絵画表現的な志向へと大きく変わっていきました。

さて具体における吉原の地位を知ることが出来るのは、芦屋に作られた常設の展示館、「グタイピナコテカ」です。

吉原の父親は製油会社の社長を務めていましたが、1962年、大阪・中之島にあったその蔵を展示館へと変えてしまいます。

実のところ具体における吉原の力は大きく、時に彼の目に止まらないものは出品出来なかったというエピソードも残されています。

結果的に高速道路の建造のために取り壊されてしまいますが、具体の中核的施設さえも吉原がいたからこそ成り得たと考えると、やはり具体は吉原に始まり吉原に終わったとしてもあながち間違いではないのかもしれません。


松谷武利「Work'65」1965年 兵庫県立美術館

さて前後しますが、具体をGUTAI化されたタピエ、とある絵画表現上の一潮流を具体のメンバーに持ち込むことになります。

それがアンフォルメルです。タピエはアジアにおいてアンフォルメルを成し遂げたグループこそが具体だと述べます。

すると具体の表現はさらに転換、ともかくこの頃の一部の作品は、一目見るだけでも分かるほどアンフォルメルの影響が強くなります。

またもう一つ具体を変えていったのが、当時の絵画においてムーブメントを巻き起こしていた「クールな抽象」です。


今井祝雄「白のセレモニー・HOLES#6」1966年 兵庫県立美術館

1965年頃を境に、これまでの物質感も強いエネルギッシュな作品が、言わばシステマティックでクールなものへと変化します。

これは具体の活動にマンネリを感じた吉原がメンバーを入れ替えたことにも由来しますが、ともかくも作品は初期の具体とは似ても似つきません。


今中クミ子「作品」1966年 財団法人駒形十吉記念美術館

具体は吉原が亡くなった1972年に解散しますが、僅か20年弱の間に目まぐるしく移った表現の変遷も、また大いに注目すべきだと言えそうです。

ラストはテクノロジーと大阪万博です。

と言ってもこのテクノロジー、鍵カッコ付き、ようはあくまでも当時が未来的だとイメージしたSF的世界としても差し支えありません。

一例がヨシダミノルの「Bisexual Flower」(1970年)です。


ヨシダミノル「Bisexual Flower」1970年 個人蔵

暗闇に浮かび上がる透明なプラスチックの花、ブオーという音とともに大きく花開く様子は殆ど不気味ですが、これは言うまでもなく液体と機械によって動いています。

けばけばしいまでの蛍光色に、間違いなく実在しない無機的な機械の花、その異世界の光と動きは、60〜70年代の近未来の一つのイメージとも捉えられるのではないでしょうか。

そしてその集大成とも、また言葉は適切ではないかもしれませんが、逆に成れの果てとも取れるのが大阪万博でのパフォーマンスです。

万博では会場のEXPO広場で「具体美術まつり」と称する各種パフォーマンスが行われましたが、(その記録映像が紹介されています。)やたらに巨大な「親子ロボット」にオモチャの犬を使った「101匹」などは、現代の観点から一方的に云々するのも問題があるとはいえ、もはや滑稽の一言に尽きます。

もちろん漫才ならぬ、どこか吹き出してしまうような可笑しさも具体の魅力かもしれませんが、必ずしも全てではないものの、初期の挑戦的なパフォーマンスに比べると、アイデアしかり、どこか何かを失ってしまった故の寂しさを感じてなりませんでした。

会場入口、何やら破れた布地のようなものが垂れていますが、これももちろん作品です。

過去の具体展でも恒例であったという入口を突き破るパフォーマンス、本展でもオープニング時に、元・具体会員の村上三郎の子息の村上知彦氏によって行われました。

そのパフォーマンスの映像は会場の他、yotubeにもあがっています。

gutai


この単純ながらも何かに緊張感を持って対峙し、そして未来を切り開いていく行為、さらにはその生々しいまでの痕跡、これこそが具体の最大の魅力ではないでしょうか。

かつて殆ど偶然的に見た兵庫県立美術館の具体展(2004年)で圧倒されて以来、いつか更なる回顧展をと望んでいましたが、こうした形で実現されて思わず胸が熱くなりました。もちろん関東では初の具体回顧展です。

閑散とした会場にはエアコンも効いてそれこそ寒々としていましたが、この具体の熱気、是非とも味わってみて下さい。

9月10日までの開催です。もちろんおすすめします。

「具体−ニッポンの前衛 18年の軌跡」 国立新美術館
会期:7月4日(水)〜9月10日(月)
休館:火曜日。
時間:10:00〜18:00 *金曜日は20時まで開館。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。

「ドビュッシー展」が7月14日(土)よりスタート!

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フランスの近代音楽を代表する音楽家、クロード・ドビュッシー。



その業績を美術の観点から紐解く展覧会、先行したパリのオランジュリー美術館では30万人を動員したことでも話題となりましたが、その拡大バージョンとも言える展示がいよいよ、7月14日(土)より東京で始まります。

それが「ドビュッシー、音楽と美術」展です。

「ドビュッシー展」(ブリヂストン美術館)記者発表会

会場はフランス近代美術コレクションでも定評のある京橋のブリヂストン美術館。

オランジュリー美術館での展示をベースに、ブリヂストン美術館の所蔵品を加え、豊富な資料とともにドビュッシーと彼を取り巻く芸術を紹介する内容となっていました。

展示の様子は別途またまとめるとして、取り急ぎ本日、7月13日に行われた記者会見の様子をまずはご紹介。



登壇はブリヂストン美術館の館長島田氏をはじめ、オルセー美術館館長のコジュヴァル氏にオランジュリー美術館館長のポール=ヴァイル氏ら6名。



それぞれ本展にかける熱い意気込みが語られましたが、その中でも興味深かったのはオルセー館長のコジュヴァル氏がかつてローマでドビュッシー絡みの展覧会を手がけていたということ。



よってコジュヴァル氏がオルセーに赴任した際にすぐ、学芸の側からもこのようなドビュッシー展を開催しようという話が立ち上がったのだそうです。



またフランス側の監修者で同国の科学研究所学芸員のネクトゥー氏は、そもそもドビュッシーは当時のジャポニスムから浮世絵などを所有するほど日本美術に関心を持ち、「ペレアスとメリザンド」を日本で上演することを願っていた、という話をされました。



それにしても会場は深いブルー一色。これはオランジュリー会場と同じ色をとの試みから、ブリヂストン美術館が本展のためだけにわざわざ塗り替えたのだそうです。



また今回はオルセーからさりげなく非常に魅惑的な絵画が来日しているのもポイントかもしれません。

世紀末の画家、アンリ=エドモン=クロスやウィンスロー・ホーマー、ジョルジュ・ランコブあたりの作品にはただただ見惚れるばかり。



もちろんドビュッシーの創作を直接的に示す資料、例えば交響詩「海」を始めとする楽譜類や、コレクションしていた工芸品も展示されていました。



10章だての構成はかなり細かく、特にペレアスとメリザンド、また聖セバスチャンの殉教などの大作に関しては、丸々一章で紹介。

章の頭のキャプションの記述も詳細、かなり突っ込んだ内容だという印象を受けました。(図録のテキストも充実しています!)

さて今回、ちょっと面白いのが音声ガイドです。

音楽家ドビュッシーの展覧会ということで、当然ながら彼の曲がいくつか入っていますが、そのいずれもがセルゲイ・ラフマニノフによる「子供の領分」や、ドビュッシー自らピアノを弾いた歌曲など、1900年代の古い録音なのです。


展覧会図録とオリジナルバッジ型プレイヤー(図録右下)

ドビュッシー自らが語るというガイドの流れも引き込まれますが、ここは目でなく耳でもドビュッシーと同時代の芸術を楽しめるというわけでした。

ちなみに収録曲は展覧会の公式CDアルバムでも聞くことが出来ます。

またもう一つ、音楽絡みのオリジナルグッズとして興味深いのがバッジ型プレイヤー。

わずか直径5センチほどの携帯プレイヤーにはドビュッシーの曲が17曲ほど収録されています。

展覧会にあわせていつでもどこでもドビュッシー、面白い試みだと言えそうです。



パリでも大反響だった「ドビュッシー、音楽と美術」の日本唯一の拡大巡回展、7月14日(土)にブリヂストン美術館で開幕します!

*展覧会の内容についてはまた後日まとめます。

「ドビュッシー、音楽と美術―印象派と象徴派のあいだで」 ブリヂストン美術館
会期:7月14日(土)〜10月14日(日)
時間:10:00〜18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
主催:オルセー美術館、オランジュリー美術館、石橋財団ブリヂストン美術館、日本経済新聞社
住所:中央区京橋1-10-1
料金:一般1500円(1300円)、65歳以上シニア1300円(1100円)、大・高生1000円(800円) *カッコ内は15名以上団体料金。
交通 :JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

「藤井秀全:Staining」 LIXILギャラリー

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LIXILギャラリー
「藤井秀全:Staining」
7/2-7/26



リクシルギャラリーで開催中の藤井秀全個展、「Staining」へ行ってきました。

LEDを用いたインスタレーション、まさに七色に点滅する光の美しさに魅了される方も多いかもしれません。

薄暗がりの会場にて瞬くのは、半透明、それこそ何らかの有機体であるかのような複雑な形をして浮かび上がるLEDのオブジェです。


「Twinkle Wrinkle」(2012)

光のボリュームは時に壁面から会場全体へと広がり、また収縮し、さらには反射をして多様なイメージを作り出しています。

またイメージならぬ「光の染み」を壁面へ放ったのが「Staining」(2012)です。


「Staining」(2011)

LEDからの明かりは壁にそれこそ染み出し、まるで光を纏った霧のような像を映し出しているではありませんか。

そしてさらに美しいのが透明の光のボックス、「Color "Constituent"」(2010)です。


「Color "Transition"」(2010)

中には光瞬くオブジェが入っていることが分かりますが、その光を受ける素材を聞いて驚かされます。何とセロハンテープです。つまり様々に伸びて絡み合ったテープ自体が、あたかも宝石のような輝きを放っているというわけでした。

空間全体へと染み渡り、増幅、さらには収縮する眩い光のインスタレーション、シンプルな装置ながらも、思いの外に心地よい空間を作り上げていました。

なお作家の藤井は本年の六本木アートナイトにも出品があったそうです。そちらで楽しまれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。


「Twinkle Wrinkle」(2012)部分

7月26日まで開催されています。

「藤井秀全:Staining」 LIXILギャラリー
会期:7月2日(月)〜7月26日(木)
休廊:日・祝
時間:10:00〜18:00
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分。

「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」 原美術館

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原美術館
「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」
7/12-8/19



原美術館で開催中の「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」へ行ってきました。

若手作家を支援するプロジェクトとして進行中(不定期)のハラドキュメンツ。

第9弾に当たる本展に登場したのは、1976年に愛知県で生まれ、現在名古屋に拠点を置いて制作活動をする画家、安藤正子です。

非常にゆったりとしたペースでの制作のゆえ、今まで公開してきた絵画は僅か10点に過ぎないそうですが、本展では未発表作品と本年の最新作をあわせ、全19点の作品が出品されました。

冒頭、エントランス横のギャラリー1に展示されているのは鉛筆画です。

すぐに展覧会タイトルにも掲げられた一枚、ホースから水の噴き出す花畑に殆ど裸で立つ少年、「おへその庭」が目に入ってきますが、ともかくは線描、その細密でかつ生々しい様子には驚かされるのではないでしょうか。

とりわけ頭部、特にやや巻いた髪の凄まじき精緻な描写には思わず息をのんでしまいます。

限りなく細い線が澱みなく延び、そこに仄かなボカシが入ることで、巧みなボリューム感までが生み出されています。

またその線の魅力は一枚のセーターを着た少女、「雑種」においても損なわれることはありません。

ここでも洗いざらし風の髪の毛の艶やかなる様に魅了されますが、蝶やタンポポの紋様を描くセーターの縫い目が、これまた極めて細かに表現されてはいないでしょうか。

ともかくはまずこの滑らかな線です。ぐっと引込まれました。

さてメインのスペース、ギャラリー2へ進むと今後は油彩画が現れます。

ここでも初めに触れた「おへその庭」の油彩が展示されていますが、まず見入るのはやや乳白色を帯びた表面の質感ではないでしょうか。

それを一言で表せばずばり陶器です。やや光沢感を持った表面は、当然ながら通常のカンヴァス面とは大きく異なっています。

実のところこの表面の質感こそ安藤の描法における最も個性的な部分に他なりません。

彼女はまずキャンバスに下地を塗り、それを一旦乾燥させ、さらには目地が消えるほどに塗り込めた後、今度はサンドペーパーで磨いていくという手法を用いています。

その上に絵具がのっているわけです。また絵具を置く段階においても薄い透明な絵具を塗り重ねるグレーズという技術を用いている上、ここでもさらに叩いたり延ばすという技法を用いているからか、厚みを帯びているというよりも、絵具が平面上へ沈み込むかの如く固着しているような印象を与えてます。

そして当然ながら絵筆の筆致も下絵の鉛筆同様、実に繊細です。赤ん坊が毛布をかけて眠る「Light」の毛の編み目を見て下さい。色の細やかなグラデーションはもとより、毛羽立つ糸までが細い線で表現されているではありませんか。

生々しくもある精緻な線描に裏打ちされた艶やかなる油彩表現、これだけでも軽い興奮を覚えてしまうほどでした。

一方、今度はモチーフ自体の面白さです。

いずれもが先の「おへその庭」同様、人物が出てくるわけではありませんが、やはり興味深いのは少女や子どもをモチーフとする作品でした。

昨年、及び本年に描かれた新作3点、「APE」、「ウサギ」、「パイン」こそ、まさに安藤の制作の今を知ることが出来ると言えるかもしれません。ちなみにここには旧作では殆ど見られない、メインのモチーフとは無関係の色や形が挿入されていることが見て取れます。

そしていずれもが今挙げたような少女たちが描かれていますが、その表情は心の奥底にこそ強い意志を秘めているようでも、どこか捉え難い虚ろな様子をしているように思えてなりません。

また地面に勝手気侭に乱れて咲く草花、そして背景の遠近感を喪失させる白んだ空間など、それこそ実在することの決してない幻想風景が描かれているとも言えるのではないでしょうか。

またもう一つ興味深いのは、例えば草同士が重なり合って空間を埋め尽くしていく密なる表現や、体のごく一部、例えば指先の皺や爪を奇妙なほどに誇張した描写などです。

そうした細部への際立った眼差し、どこか作家自身の何らかへの執着、言い換えればフェティシズム的な要素も感じてなりませんでした。

東京では2004年の小山登美夫ギャラリー以来の展示、また美術館では初の個展だそうです。図版では全く分からない魅力、久々に作品と対面してゾクゾクしてしまいました。

ART iTの原美術館のブログに安藤のインタビュー記事があります。3部作の充実した内容です。是非ご覧ください。

1.安藤正子メールインタビュー [原美術館]:頭の中の風景をかたちにする
2.安藤正子メールインタビュー [原美術館]:世界に似た絵
3.安藤正子メールインタビュー [原美術館]:「世界」であると同時に、いのりである

8月19日まで開催されています。ずばりおすすめします。

「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」 原美術館@haramuseum
会期:7月12日(木)〜8月19日(日)
休館:月曜日。(但し祝日に当たる7月16日は開館、翌17日は休館。)
時間:11:00〜17:00。*毎週水曜日は20時まで開館。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。

「関口正浩:仮面」 児玉画廊東京

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児玉画廊東京
「関口正浩:仮面」
7/7-8/11



児玉画廊東京で開催中の関口正浩個展、「仮面」へいってきました。

明るいオレンジやグリーンなどの色彩と幾何学的なモチーフ。

遠目から眺める限りおいては一見、シンプルな色と形によって出来た抽象画に思えるかもしれません。

しかしながら鮮やかな色に引かれて近づいてみるとこれまた意外、初めの印象とは異なる世界が開かれていることが分かりました。

ずばり絵画は単純に平面ではなく、奥行き、言わば垂直性を伴っています。

ようは平面上において塗り分けられていると思った色の面は、実のところ何層かに積み上がった絵具の膜によって作り出されていたのです。

例えばグレーと水色の面がせめぎ合っているとしましょう。

通常の絵画であるならば、そこは筆を変え、また絵具を変えるなどして同一の支持体の上に塗るわけですが、関口の作品はそれぞれの絵具が異なる平面、言い換えればさも地層を描くかのように上下別の面になっています。

それぞれに積み上がった絵具の膜は時に折り紙のように曲げられ、また剥がされ、一方で逆に合わせ貼られることで、様々な形を描いていきます。

ざっくりと入れられた切れ目、またその下から覗き込む色の形、さらには捻られた膜による歪みなどが、一つのパネルの中に複層的に現れているではありませんか。

正面から開ける色と形によるリズミカルな動きに、膜の上下の断面から生じる緊張感が加わりました。

また断面は絵具の膜を固定するのではなく、磁石によって留める、ようはあくまでも抑えられているのみに過ぎません。

描くというよりも切り貼りして出来上がる形の面白さ、膜だからこそ浮き上がる絵具の物質感もまた魅力的です。

関口正浩「仮面」インスタレーションビュー@児玉画廊東京

実のところ今回初めて見知った作家でしたが、思いの他に惹かれました。

なお児玉画廊では新作の主に小品がメイン(20点ほど)ですが、オペラシティアートギャラリーの「projectN」で開催中の個展では、もっと大きなサイズの作品が展示されているそうです。



「projectN 49 関口正浩」@東京オペラシティアートギャラリー 4/13-9/2

そちらも是非、伺いたいです。

8月11日まで開催されています。

「関口正浩 仮面」 児玉画廊東京
会期:7月7日(土)〜8月11日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00〜19:00
住所:港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス1階
交通:東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅3番出口より徒歩10分。東京メトロ日比谷線広尾駅1番出口より徒歩15分。

「船田玉樹展」 練馬区立美術館

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練馬区立美術館
「生誕100年 船田玉樹―異端にして正統、孤高の画人生。」
7/15-9/9



練馬区立美術館で開催中の「生誕100年 船田玉樹―異端にして正統、孤高の画人生。」の特別内覧会に参加してきました。

「異端にして正統、孤高の画人生。」(美術館サイトより転載)

かつては速水御舟や小林古径に師事し、その後は丸木位里らと「歴程美術協会」を結成、前衛表現に取り組むもまた一転、晩年は軽妙な水墨や絢爛な屏風絵を数々残した。

そう言われてもあまりピンと来ない方も多いかもしれません。

しかしながら上にもアップしたチラシの表紙を見て、見覚えあるぞと思われた方もおられるのではないでしょうか。


右:船田玉樹「花の夕」1938年

そうです。これこそ昨年、東京国立近代美術館の「日本画の前衛展」で同じくチラシ表紙を飾った、船田玉樹の「花の夕」に他なりません。

かの展覧会では第二次世界大戦前夜、「日本画らしからぬ日本画」を描いた日本画家を紹介しましたが、その重要な人物である船田玉樹こそ、今回の主人公というわけでした。

出品は資料などをあわせると約200点。ちなみにこれまで作品は必ずしも整理された状況にあったわけではなく、それこそ巻いたままの作品もあったそうですが、本展にあわせて調査も行われ、こうしたスケールでの回顧展が実現しました。

前振りが長くなりました。展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 画業のはじまり
第2章 新たな出発
第3章 水墨の研究
第4章 孤高の画境へ

基本的には時系列ですが、かの山下裕二先生をして「この画業の変転は、尋常ではない。」と言わしめるほど、ともかく作風が変化していきます。

さて展示は速水御舟に小林古径から始まります。

1912年に広島で生まれ、20歳の頃に上京した玉樹は、当初洋画を描き出すも、宗達などの琳派に強く惹かれ、日本画の道を志すようになりました。

そこで入門したのが速水御舟の画塾です。結果的にすぐ御舟が没したため、今度は古径に師事しますが、玉樹にとって御舟との出会いは、最後まで彼の生き方に大きな影響を与えました。

そうした御舟と玉樹の作品を並べて見られるのもまたポイントかもしれません。


右:船田玉樹「白木瓜」1934年
左:速水御舟「花と果実」1934年

玉樹の「白木瓜」(1934年)の隣には、御舟の同年の作、「花と果実」(1934年)が展示されています。

また同じく師弟では玉樹の「椿」(1942年)と御舟の「芥子」(1934年)も興味深いのではないでしょうか。


右:速水御舟「芥子」1934年
左:船田玉樹「椿」1942年

後に玉樹が多く描く牡丹にも御舟作が出ていて、見比べることが出来ますが、塗りに対する感覚は大きく異なる(油画を一度経由した玉樹の方が物質感が強く出ています。)ものの、こと晩年の御舟らしいデフォルメしたような形、とりわけ線の鋭角的な伸ばし方には相似点があると言えるかもしれません。


左奥:丸木位里「馬」1939年 原爆の図丸木美術館

実は本展、この御舟だけでなく、後に玉樹と活動をともにする丸木位里や靉光らといった関連の画家の作品も十数点の規模で展示されています。そしてそれらを玉樹とあわせ見ることで、当時の日本画と洋画を間を超えた前衛表現を知ることも出来ました。

さて1938年、その丸木位里らと結成したのが、これまでにはない美術の表現を目指した「歴程美術協会」です。

玉樹は第一回展において早くも代表作とも言うべき「花の夕」を出品します。


船田玉樹「花の夕」1938年

まずは大胆に散らした、ほぼショッキングピンクともとれるような鮮烈な色に目を奪われますが、実は幹の部分に銀色の月がかかっている点も見逃してはなりません。

強い色彩と抽象性を帯びた花々が、玉樹の敬愛していた琳派と重なり合います。それに練馬区美の最新のLED照明により、東近美で見た時よりさらに色が際立って見えるのも嬉しいところでした。

さて僅か一年あまりで「歴程美術協会」を脱退した玉樹は、戦後、郷里の広島へ引き下がり、院展などに出品を重ねながら、時に実験的な素材にも取り組み、さらに独自の画業を切り開いていきました。

ともかくここで目立つのはまず大作、そして強い絵具の重み、また空間を全てを埋めて尽くすかのような筆の迫力です。


船田玉樹「臥龍梅」1956年

「臥龍梅」(1956年)では木の幹、枝が、それこそ龍の如く空間を切り裂き、そこへ強い風に雪を散らしたかのような白い花が咲いています。

また空間を埋め尽くすと言えば「松」(1967年)も忘れられません。


船田玉樹「松」1967年 蘭島閣美術館
 
幹から枝、さらに葉先まで、無数の線という線が、まさに縦横無尽、乱れ狂うかのように引かれています。

また九品仏や滝など、一定のモチーフを何度も描き続けたのもこの時代の玉樹の特徴です。もちろん軽妙な小品、例えば幻想的なまでの「牡丹」にも引かれますが、こうした一連の大作に見る力強さこそ、玉樹の真骨頂と思えてなりませんでした。


船田玉樹「滝の口」1961年 他

ちなみにこうした一連の大作、院展から大き過ぎるという批判を受けていたそうです。玉樹はそれに嫌気を覚え、結果的に脱退してしまいますが、こうした大画面も、彼のあくなき創作の意欲の表れと言えるのかもしれません。

さて玉樹、60歳を過ぎてからさらなる大きな転機を迎えます。

大病です。1974年にクモ膜下出血で倒れた彼は右半身が不自由になってしまいます。

しかしながらそれでも右手で筆をとること拘り続けた玉樹は、今度は水墨の世界へと新たなる道を開きました。


第3章「水墨の研究」展示風景

またここでは自らを河童になぞらえ、芋銭ならぬ河童の絵を詩とともに描いている点もまた面白いところです。時に一年で100枚以上も河童の絵を描き、また一晩で16編の詩を詠んだという逸話も残っています。


船田玉樹「無題」 他

それに実験的な試みとしてガラス絵のコラージュも制作し始めます。また玉樹は水墨とガラスを同時に扱うことについて、「柔らかいものと硬いものという全く異なった材質のものを同時に並べて発表してみたい。」と語ったそうです。新たな表現への挑戦は止まることがありません。

そして最晩年にはこれまた生命感溢れた大作の屏風絵が登場します。

より全ての余白を覆うかのような大胆でかつ激しき筆致で、これまでにも何度か描いてきた松や桜といったモチーフを昇華させました。


右横:船田玉樹「松」1981年
左奥:船田玉樹「枝垂れ桜」1986年

また黒々と空間を覆う松はもはや元の形態を超越しているのではないでしょうか。枝垂れ桜はそれこそ滝のように花を画面いっぱいに溢れていました。

「画神に取り憑かれた」(図録より引用)とまで称される船田玉樹の変遷に変遷を重ねた画業人生、是非とも練馬区立美術館で追体験してください。

会期中、館内での無料(要展覧会チケット)コンサートも予定されています。

1「幻の古楽器 七弦琴コンサート」 7月28日(土曜)午後3時から
  奏者:楊鵬(中国七弦琴呉派伝人)
2「幻惑の楽器 テルミン・コンサート」 8月25日(土曜)午後3時から
  奏者:lpso facto「船田奇岑(テルミン)、RAKASU PROJECT.、西田彩による電子音楽ユニット」
なお奏者の船田奇岑さんは玉樹のご子息です。画家としての創作の他、テルミン(ロシア生まれの電子楽器)といった電子音楽の演奏活動もされているそうです。

また奇岑さんによるトークも9月に行われます。

「船田奇岑(船田玉樹子息、画家、Thereminist)によるギャラリートーク」
日時:9月8日(土曜)午後3時から
貴重なお話が伺えるかもしれません。


右:船田玉樹「老梅」1979年

なお図録は書籍として書店でも販売中です。会場ではやや手薄でもあった玉樹の詩や言葉も多く引用されていました。

「独座の宴 船田玉樹画文集/求龍堂」

近代日本画ファンもちろん、「日本画の前衛展」をご覧になった方には特におすすめしたい展覧会です。

9月9日まで開催されています。

「生誕100年 船田玉樹―異端にして正統、孤高の画人生。」 練馬区立美術館
会期:7月15日(日)〜9月9日(日)
休館:月曜日 *但し7月16日は開館、翌7月17日は休館。
時間:10:00〜18:00
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。

注)写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

「元素のふしぎ」 国立科学博物館

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国立科学博物館
「元素のふしぎ」
7/21-10/8



国立科学博物館で開催中の「元素のふしぎ」のプレスプレビューに参加してきました。

「水兵リーベ僕の舟、七曲がるシップス、クラークか。」

元素と言えば覚えるのに頭の痛かった周期表、そしてその暗記法程度しか思いつかない「文系脳」の私にとって、元素とは何ぞや、そして数、またそれぞれの性質はどうなのかと問われても、直ぐさま答えに窮してしまうのは否めようもありません。



しかしながら身の回りのものから宇宙まで、どのような元素で出来ているのかと思いを巡らせるのも、また興味深いのではないでしょうか。

まさに「世界のすべては元素でできている。」。それこそ普段目にしている絵画も元素で出来ているわけですが、ともかくも本展では最新の研究成果を交え、見て触って、さらには時に全身で体感して、元素を分かりやすく理解出来るように工夫されていました。



はじめに宇宙に自然、また絵画に身体や食べ物と、まさに森羅万象、全の源は元素であることをざっとおさらいした上で登場するのは、元素の単体と関連する様々な物質、また製品です。



実は現在、我々人類が確認した元素の数は全部で118種類ありますが、うち実物を展示するのが困難なもの(放射性元素など。)を除いた元素の数多くの単体、鉱物が紹介されています。



水兵リーベからして元素記号1番、まぎれなく水素ですが、そこでは水素エンジンならぬロケットや車の見本などが展示されているわけです。



またもう一つ重要な元素としてよく取り上げられるのが炭素です。

実はこの炭素、他の元素にも共通しますが、配列が変わると大きく性質が変化することをご存知でしょうか。

何を隠そう石炭も木炭もダイヤモンドも主成分は炭素です。また実はサファイアやルビーも主成分はほぼ同じですが、そこへ鉄やチタンが加わるとサファイアに、一方でクロムという元素が加わるとルビーになります。



展示ではそうした宝石類のサンプルもずらりと揃います。光り物好きな方には嬉しいポイントかも知れません。

さてここでは一応美術ファンということで、美術の観点から展覧会を見つめましょう。

それが「絵画と元素」、「工芸と元素」のコーナーです。

何とびっくり科博に有田焼の大皿が展示されているわけではありませんか。



柿右衛門といえば鮮やかな色合いに惹かれる方も多いかもしれませんが、当然ながらその色の違いを決めるのも元素が重要なウエイトをしめています。



そしてまたまた登場フェルメールです。すぐ近くの西美ベルリン展にもお出ましの「真珠の首飾りの少女」、もちろんこれは複製画ですが、そもそもの色を決定する染料と顔料の元素の種類などが紹介されています。フェルメールブルーだって元を辿れば硫黄、ナトリウム、アルミニウムで出来ているわけです。



光琳畢竟の大作「紅白梅図」(写真はミニレプリカ)も色、岩絵具、そして元素の観点から分析しています。この作品は長らく中央の水流の下地が何であるか分かっていませんでしたが、それも科学調査で銀であることが判明しました。眩い金、そして銀も当然ながら元素そのものなのです。



ちなみに会場ではハンズオンとして体験型の展示もあります。



その一例がこの重さ比較、金、銀、銅、アルミの延べ棒を持ち上げられるコーナーです。



また面白いのがこの元素体重計、上にのるとあらびっくり、自分の体重はおろか、その元素の組成の重さまでが表示されます。人の体の60パーセントは酸素とは知りませんでした。

また光も元素が大きな関わりを持っていることをご存知でしょうか。



例えばネオンサインのネオンも元素そのものですが、放電管やプラズマボールなどで、元素によって光は大きく変わっていきます。

ラストは資源として稀少ながらも利用価値の高いレアメタル、レアアースです。特にレアアースは最近、日本に南鳥島付近の海底に大量に埋蔵されていることが分かった、というニュースでも話題となりました。



ここではそれこそ全然耳にしたこともない、言わばマニアックな元素が身近な製品にいくつも利用されていることが分かります。



例えばスカイツリーを灯すLEDの蛍光体、また最近よく駅などで見かける高硬度蓄光板、それにスマホや自動車のモーター磁石など、欠かせない製品もレアアースがあってからのことです。



また元素の研究自体も留まることを知りません。実は118種類の元素のうち、一番最近命名されたのはついこの前の5月、「フロレビウム」と「リバモリウム」なのだそうです。

118番目以降の元素の存在も理論的には可能です。元素周期表はさらに書き換えられていくのかもしれません。

世界でも珍しいという「元素」にターゲットを絞った展覧会、思いっきり文系の私も意外なほど楽しむことが出来ました。



ちなみに夏休み期間中(7/21〜9/2)、何と連日先着200名に展覧会ロゴ入りのヘリウム風船のプレゼントがあります。それこそ夏休みの自由研究ならぬファミリーでの観覧も良いのではないでしょうか。小・中・高校生の観覧料は嬉しいことにワンコインの500円です。

10月8日まで開催されています。

「元素のふしぎ」@TBS_gensoten) 国立科学博物館
会期:7月21日(土)〜10月8日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し3月26日、4月2日、4月30日は開館。
時間:9:00〜17:00。金曜は20時まで。*8月11日(土)〜8月19日(日)は18時まで。但し8月17日(金)は20時まで。
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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